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2025年6月22日日曜日

香天集6月22日 古澤かおる、木村博昭、砂山恵子、安部いろん他

香天集6月22日 岡田耕治 選

古澤かおる
木漏れ日に顔を泳がせ青岬
梅雨曇グラスに緑茶澄んであり
麦秋のサンドイッチを辛くする
青蛙二匹に白いガーデンチェア

木村博昭
片言の日本語で売る夜店かな
飛ぶ夢を見る少年の青岬
草笛を吹く老人の底力
キャタピラの迫り来ている五月闇

砂山恵子
言葉とは海かも知れぬ水母浮き
紫陽花や高きところに空があり
トマト植ゑ何故か明るき宵の庭
何もなき庭だが蛍はたんとゐる

安部いろん
梅雨に入るほんとかどうかわからない
ひきがえる啼く失言はないだろう
夏の野に我が触角が落ちていた
蜘蛛の囲に国への不満からまりぬ

嶋田 静
花桐や行方知れずの友のあり
若葉風共にくぐりし札所かな
楠若葉奥にしずまる美術館
母の日や濃い目のルージュ引いておく

橋本喜美子
首振りて泳ぐ鳥あり春の川
山茱萸の花の迎ふる美術館
女どち声の弾ける花の下
空模様定まらぬ日や桜餅

北橋世喜子
春来たる故郷訛の長話
ごはんよー目高六匹浮いてくる
とぎ汁の米粒探す雀の子
春休カメラぶら下げ時刻表

中島孝子
幼子の笑まう鼻歌チューリップ
切株の一枝が伸び花蕾む
二人して摘みし絹莢五つほど
父母を撫づりて洗う彼岸かな

上原晃子
縁石の割れ目すみれの整列す
桜咲く不安を抱え自己注射
仰ぎたるミモザの花に深呼吸
鉄棒の子らを見ている雪柳

半田澄夫
行先を問わないでおく春帽子
動き出す開花宣言ひと言で
人群れるソメイヨシノの標本木
花浮かれ訪日外国人さえも

石田敦子
白木蓮もう来る頃か窓の中
声高き子らてんしばの春休
父母の写真に供ふ彼岸餅
大谷が日本に居る夜半の春

東淑子
菜の花や二人の子らと散歩する
春の宵本はいやだと子が怒り
花かりん見上げていたる月夜かな
沈丁花匂いを吸いて宵の月

〈選後随想〉 耕治
麦秋のサンドイッチを辛くする 古澤かおる
 先日の大阪句会で久保純夫さんも、私も特選に推した句。麦秋というのは、渡邉美保さんが評したように、生命力があるけれども、同時に鬱陶しさも感じる。サンドイッチを辛くするのだから、夏になって、ちょっと塩分を自分の中に入れたいという思いもあるし、それから辛子マスタードを塗っても、塗らなくても、麦秋そのものがサンドイッチの味を濃くしているという読みもできるだろう。また、森谷一成さんが評したように、麦秋の色とサンドイッチのマスタードの色が共鳴しているところも印象的だ。単に日頃食べているサンドイッチなんだけれども、それをこんな風に表現することができるんだということをかおるさんに教えてもらった。
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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