2016年3月6日日曜日

香天集 3月6日 久堀博美、浅野千代ほか

香天集 3月6日 岡田耕治選

久堀博美
ポケットの小銭を増やす日永かな
ビニールの屋根を鳴らして春嵐
ふだん着のすこし酔いたる春ともし
朝寝して起床後の我見ていたり
介護とは春を一緒に遊ぶこと

浅野千代
客の来て帰りし後のクリスマス
長い長い遺言春のはじまりに
牡丹雪ぼくをきらいな君が好き
起こること凡ては些細葱の花

釜田きよ子
冬の雲土に練り込む唐津焼
梟の置物ごろすけほーと鳴け
春立ちぬえびせんべいの紅ほのか
山笑う雲の枕を取り払い

小崎ひろ子
駅の階うらうらと春ついてくる
デイジーの遥か向こうに誰か居た
沈黙を呼び出している梅の花
窓開く空にいきなり春の雲

坂原 梢
老翁の声のはつらつ苗木植う
なつかしい人を数えて針供養
病院のマスクとマスク擦れ違う

冨永道子
待合の帆船孕み春の風邪
赤赤と辻の地蔵の春帽子
越前の水の豊かに紙雛

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