2022年11月27日日曜日

香天集11月27日 森谷一成、石井冴、中嶋飛鳥、木村博昭ほか

香天集11月27日 岡田耕治 選

森谷一成
スパイクの土一面の秋黴雨
一病を墨書してみる文化の日
秋天を覗いていたる潦
ネクタイをとぐろに落し秋深む

石井 冴
さくさくともらわれていく藁人形
空腹の遊び足りない藁ぼっち
新鮮な枯葉の匂う本屋さん
ランナーも鯨の顎も風の中

中嶋飛鳥
まげのばしして秋天朗ら朗ら
暮の秋文字は手を上げ脚を跳ね 
返り花焦燥感に点を打つ
冬の虹後ろから来る笑い声

木村博昭
登校の声のみ聞こゆ霧ぶすま
百年の松に縄張る冬支度
チェンソーのひびく青空冬に入る
鰭酒に酔うてころんで齢を言う

安部礼子
寒の月戒厳のなお続く国
マドリガル女が変えてゆく枯野
愛だけを救いに仕立て枯蓮
本当の死を奪われる枯葎

長谷川洋子
紅葉且つ散るをたのしむ車中から
あかるさは桂と銀杏の我家にて
藁塚やお酒の好きな方のこと
思い切って話し掛けたる後の月
*和歌山市加太にて。

2022年11月20日日曜日

香天集11月20日 三好広一郎、宮下揺子、古澤かおる他

香天集11月20日 岡田耕治 選

三好広一郎
秋高し歌劇の口の多角形
月光広場コンビニができるらしい
蜜柑剥く回覧板が濡れている
冬の虹いちばん好きな色がない

宮下揺子
思いやりの嘘にして青からす瓜
だまし絵の裏よりちちろ飛び出せり
吊橋に戸惑っている秋茜
すさまじき秋夕焼の中を来る

古澤かおる
看板の似顔絵が下手小六月
小雪や四隅の昏き父の寝間
初時雨いつまでもある洗い物
野の小春鉢割れ猫が先を行く

小島守
燗酒やこの一言は言わず置く
冬の滝打たれる前の鼓動にて
だいたいのところで終わり落葉掻
黒マント次から次に出てきたる
*岬町多奈川線にて。

2022年11月13日日曜日

香天集11月13日 三好つや子、柴田亨、渡邉美保、砂山恵子ほか

香天集11月13日 岡田耕治 選

三好つや子
藁塚にまれびとこぞる後の月
通草の実見えないものの寝息かな
団栗を拾う指銃弾(たま)拾う指
しぐるるや鉄の匂いのする映画

柴田亨
大銀杏その一本に気骨あり
この角を曲がれば別れ金木犀
人去りぬ後ろ姿も夕映えも
噺家の語りのリズムあきあかね

渡邉美保
食感を伝へるための石榴の実
鳥渡るカッターの刃を紙にあて
木犀の香を早退の理由とす
妹が追いかけてゆく秋夕焼

砂山恵子
落葉道強きに響くハイヒール
次の人どうぞと言いて毛糸編む
初冬や薄き膜張る目玉焼
地球今八十億や葦枯るる

春田 真理子
銀河ゆくローズマリーの霊柩車
パン種のお喋り聴こゆ星月夜
星合やボーンチャイナに匙触るる
新月や星曼陀羅を探しゆく

田中仁美
秋の朝開店を待つスクワット
長き夜のネットサーフィン眠られず
猫の道網を付けおき秋高し
戦場のロバートキャパや鳥渡る

大西英雄
ジャズを聞き車窓に見える秋の海
Uターンし徒遍路へと出す蜜柑
紅葉にいやされている二人旅
枯葉踏み一歩一歩の遍路かな
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

2022年11月6日日曜日

香天集11月6日 浅海紀代子、釜田きよ子、垣内孝雄ほか

香天集11月6日 岡田耕治 選

浅海紀代子
ドアを閉め私の夜長始まりぬ
鈴の付く鍵持ち歩く秋夕べ
花種を蒔いて老いるを忘れおり
会うたびに遠くなりゆく鰯雲 

釜田きよ子
爪を切る金木犀の香の中に
新しき箒の節目小鳥来る
秋深む我に似てくる弟よ
小鳥来る小学生のように来る

垣内孝雄
冬ともしコーヒーミルの磨れる音
冬ざるる夜中に部屋を走る猫
ガンダムのプラモデル立て冬に入る
つちくれになりを沈むる八つ頭

牧内登志雄
墨染の袖に纏わり照紅葉
親方の一服を為す松手入
天を突く冬芽の赤き勁さかな
外套の内ポケットに名刺古る

吉丸房江
村まつり三年ぶりに生きかえり
外を見て話したくなる温め酒
秋茄子キュッキュッと揉んでおく朝餉
新米のちらし寿司へと友招く 

秋吉正子
夏終わる三百円のシャツを買い
当たりでも外れでもなし曼珠沙華
発表を終えて飛び出す秋の空
識ることの憂いを増やし青蜜柑

大里久代
露の玉心が揺れてはじけ飛ぶ
風さそう赤よりも黄の彼岸花

北岡昌子
虫の声信号を待つ同じ時
運動会少なくなぬ児童数

中田淳子
朝顔の一輪忘れられし路地
訪れん花すすき満つ無人駅

*岬町小島にて。