2021年11月28日日曜日

香天集11月28日 石井冴、玉記玉、渡邊美保。谷川すみれ他

香天集11月28日 岡田耕治 選

石井 冴
敗荷の水に浸かるも遊ばんと
顔を見るため綿虫に付いてゆく
今生の我に近づく大根焚
彼の世から葉付大根提げてくる

玉記玉
掌に祈る形のラフランス
土曜日は残業かしら桃かしら
手袋の片方のなき逢瀬かな
寵愛の過ぎたる高野豆腐かな

渡邉美保
日向ぼここの世の足が浮いてゐる
白鳥の首の直角さみしいか
火種抱くことも勤労感謝の日
寒鴉ひとは火を焚くこと忘れ

谷川すみれ
惜年の水平線の膜発光
布団から体の一部干しにけり
白菜をざっくり私は女なり
火をつける頭の中の枯落葉

中嶋飛鳥
茶柱をつまんで捨てて冬隣
日曜のパズルを埋める黄落期
短日の炎を育て手紙焼く
ミサンガの紐の捩れてふくと汁

加地弘子
身綺麗に育っておりぬ唐辛子
葛の花一人が好きな人がいる
尾花飛ぶ日射しの中の万華鏡
ここと決め落ちて三年実万両

辻井こうめ
晩稲刈る国会中継のラジオ
ひょっとこの顔してゐたり柘榴の実
裸木や全面広告ほぼ余白
やはらかに林縁揺らす野菊かな

砂山恵子
セーターの毛玉ばかりをとる授業
冬来る京都錦の香り連れ
いい挙式だつた柊咲いていた
着ぶくれて明日廃線のバスを待つ

神谷曜子
駄菓子屋の猫はまんまる秋日影
公園にはしゃぐ老人神無月
覗きたる昼の裏側大花野
曇り日の人恋う形シクラメン

安部礼子
惜しむ秋酌されること拒みいて
釣瓶落し子を諦める猫の目に
二輪車を降り匂いなき片時雨
カメラに任せ湖の寒さかな

藪内静枝
秋時雨手を振り連呼選挙カー
剪定や木犀のこし終りとす
コキアの赤タオル一枚干されけり
牛筋のひとつを加えおでん種
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

大学を好きになりたる落葉かな  耕治

 
野島 正則
 我が家が好きな落葉、近くの公園から沢山きます。大学の中には沢山の樹木があるから、さぞかし落葉も集まるのでしょうね。、午後には風が出て急激に冷えて来る変わりやすい天候です。

桑本栄太郎
 大学の構内は広々として居り、何処も銀杏、プラタナスなどの樹木が植えられ、整備されていますね?そこに落葉が積もれば、如何にもアカデミックな雰囲気があります。行き交う学生や教授なども如何にも高尚な人間に想われ、この雰囲気は小生も好きですね!

目黒 航
 味わい深い句ですね。
 桜の季節もいいですが、年の瀬の大学もいいですよね。特にコロナ禍で大学生はキャンパスに行くことが少なくなっています。大学が再び、若者達が夢を語り合い、笑い合うような場になって欲しいと先生の句を詠んで心より感じました。

大津留 直
 関西の大学は、東京近辺の大学よりもゆったり建てられていて、木々も多いように感じました。私が非常勤講師として哲学を教えていた関西学院大学でも、楓や樟が多く植えられていて、紅葉が美しく、幸せな気分でした。もちろん、若い学生さんと交流できたことが何よりも嬉しいことでした。

十河 智
 大学の構内の並木道、それは季節ごとに味わいがあります。落ち葉の季節は学年半ばで落ち着いた時期でもあり、我が大学と言う意識に浸る頃かと。この句は、「好きになりたる」で一旦切れを感じます。落ち葉を踏み、しみじみと校舎を眺める。いい学校だと思うのです。

大関博美
 大学って、憧れてましたが私はいけませんでした。娘が通った大学で、初めて大学と言うところに足を踏み入れました。池袋駅から徒歩一分。桜の木に囲まれたキャンパス。
乃木会館、血洗池、学食、喫茶店、
文化祭の頃には、桜紅葉の頃、
かさかさ踏んで、香り立つ桜の香り。

仲 寒蝉
 北海道大学のキャンパスを思い浮かべました。

島 善信
 国定公園の中にある大学は大教大だけです。

岡田 登貴
 今日は放送大学大阪学習センターにTAのお仕事で行っていました。耕治さんと同じ落ち葉を見ていたかもしれませんね!黄葉の季節、どこの大学も明るく美しくなりますね!
Biyou Utashiro
 大きなゆったりとした景色が浮かびますね

西尾 征樹
 コロナウィルスにより、ほとんど大学へ行けない状況での学校への想いを感じました。岡田先生、いつも有難うございます。感謝申し上げます。

2021年11月21日日曜日

香天集11月21日 安田中彦、三好広一郎、木村博昭ほか

香天集11月21日 岡田耕治 選

安田中彦
出雲とは無縁なカムイ神の旅
冬帽の中でぐづぐづしてをりぬ
雪婆人を恋ふるに払はるる
神留守に人の死知らす葉書くる

三好広一郎
秋の波手紙が戻ってくるような
箸よりも割箸短日の愛
真ん中に涅槃図渋谷交差点
美人画のあの唇の花野かな

木村博昭
犯行を見極めている蜻蛉の眼
馬券買いパチンコで擦る文化の日
秋深む君は大きな岩となり
武骨な手器用に柿を剥きはじむ

古澤かおる
口中に残る飴玉冬満月
縁側の小春防具と防具入れ
ひょんの実や納車の期日近づきぬ
小春日のマフィンは冷めて整いぬ

岡田ヨシ子
落葉掃く明日の色を想いつつ
ちゃんちゃんこ映す背中の丸さかな
波の花百一歳の訃報来る
日向ぼこ自動販売機は残り

永田 文
好きな葉を探すたのしさ落葉径
青空や棚田の稲穂しゃがしゃがと
白銀にまみれ芒の終演す
小ながれの落葉掻く人夕の風
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

潤目鰯午後から風の出てきたる  耕治

 
桑本栄太郎
 日本列島を急激に大陸の寒気団が被い、不安定な冬独特の天候ですね?。午前中は日が差し暖かくても、午後には風が出て急激に冷えて来る変わりやすい天候です。
 御句に、未だ目が濡れているような目刺しが一瞬に想われ、今夜は熱燗で一杯遣りたい心地です。

大関博美
今日は、魚屋さんで「潤目鰯はどう、」なんて声を掛けられて
晩酌のあてに買って来た。七輪なんか出して、支度をしてると
風が出てきてしまった。
「レンチンにするか?」思案
しかし、ね〰。「潤目は、火で炙らなきゃ」って、独り言。
風向きも煙の量も気にはなるが
ごめんなさいと呟くのである。

十河 智
 鰯の漁に出て、朝の内に帰港。午後からの風。漁はもう終わって、安心して風の強さを感じている。智

大津留 直
 この句を拝読すると、風があの干物にした鰯の独特のにおいを運んでくるように感じられるのが不思議です。すると、今日の晩酌の肴は、鰯にしようと思えてくる、これも不思議なことです。

仲 寒蝉
 二物衝撃というか二句一章ですね。潤目鰯と午後からの風と、絶妙のバランスです。この風は海から山の方へ吹くのでしょう。

2021年11月14日日曜日

香天集11月14日 柴田亨、三好つや子、小島守

香天集11月14日 岡田耕治 選

柴田 亨
私とはいまいるところ秋あかね
二人いて一人を思う夜寒かな
秋時雨指先にある恋のこと
庭よりの天に秋風渡りけり

三好つや子
秋深む七つの穴のある楽器
謎解きのような追伸きのこ飯
クレヨンの似顔絵という小春かな
手にのこる鰯の匂い一葉忌

小島 守
スカートや十一月を広がれる
神無月予約で埋まるレストラン
凍らせたウォッカひとりになる寝椅子
冬波の色を重ねていたりけり
*大阪教育大学の小中一貫教育概論の授業にて。


まちぶせの靴の先から冬に入る  耕治

 
西尾 征樹
 足の先から、冬を感じることは、季節に敏感であることを感じました。私は匂いで季節を感じることがございます。いまは、金木犀の香りがあちこちに致します。

十河 智
 まちぶせ? 謎めいたこの言葉。まさか冬を待っているわけではない。ほのかな期待にときめきつつ、恋の相手を待つのだろうか。それとも、害を成すための悪意の待ち伏せ。相手が来る前に、冬の寒さが襲って来る。足先からじわりじわりと一句の展開がドラマチックでスリリングである。

桑本 栄太郎
 この状況を色々考えてみました。昨日まで暖かい日が続いたものの、暦の上では立冬を迎え急に天候も悪くなり、今朝は一気に冬めいて感じます。その朝の出掛けの時の光景であり、冬のまちぶせに「先ず踏み出した足より冬となった」との俳人独特の比喩のようですね!

大津留 直
 小学校三・四年生くらいの子どもが、仲の良い友達をびっくりさせようと、物陰に待ち伏せしている様子が浮かんで来ます。長い間じっとしていると、足の先の方から冷えて来るのです。それを、「靴の先から冬に入る」と表現しているのだと思います。

野島 正則
 可愛い、小さな靴を想像しますね。

仲 寒蝉
 あ!石川ひとみだ!ユーミンだ!!ちょっとストーカーっぽいのか、それとも刑事の張り込み?

大関博美
 仲 寒蝉さん あたしもチラッと思いました。

2021年11月7日日曜日

香天集11月7日 釜田きよ子、前塚かいち、宮下揺子、久堀博美ほか

香天集11月7日 岡田耕治 選

釜田きよ子
シーソーの支点がずれて神無月
秋高し本気で走ることにする
風呂敷に何でも包み秋の空
身体のツボを捜している夜長

前塚かいち
後の月見えているかと電話する
応援の太鼓なら良し秋の空
売る人と買う人のいる通草かな
無花果や絵手紙に青配色す

宮下揺子
収束の根拠は何と林檎むく
木犀花「あのね」と話し始めたる
セイタカアワダチソウ捨て猫をもらう
椅子軋む待ち受け画面は雪空

久堀博美
夕刊を膝に置く癖温め酒
温め酒大きな指の創テープ
温め酒工事の灯近づきぬ
仏壇のゆっくり冷める温め酒

北村和美
十歩先のピンクの背広秋深し
二人してふわりと歩く黄落期
あちこちの犬の歯型に小鳥来る
顎を上げ色なき風のビブラート

嶋田 静
虫の声止んで鳴き出す家路かな
寄りそうてスッと刺し行く秋の蚊よ
飛ぶ時の秋蝶の羽くっきりと
青と黄の溶け合ってくる螢草
 
楽沙千子
大豆干す莢のはじける日の匂い
鋼打つリズムを変えず秋暑し
締切に間に合わすべし秋灯
相づちのまじる傾聴秋扇

吉丸房江
新米を送る良い子を産むように
コスモスが見送っている通過駅
秋晴や畑仕事の開放感
子六人育てし母や茄子の花

垣内孝雄
足裏の土の乾きよ鍬納
ふくろふのこゑは闇へのパスワード
はつ冬の螺旋を巻き切るオルゴール
缶蹴つて冬より前期高齢者
*河内長野市にて。

ここからの眺めを選ぶ小鳥かな  耕治

 
桑本 栄太郎
 美しい色と美しい鳴き声の秋の小鳥達です。人間ばかりではなく、眺めの良い場所を選ぶ小鳥達の心情の視点に立った自然を愛でる優しい一句ですね!
大津留 直
 高千穂に国見峠という高台があり、遠く阿蘇連山を眺めることができる。私が訪れたのは、春であったが、たくさんの鶯が見事に鳴き交わしていた。この御句から私が思い描いたのは、まさに、その国見峠であった。人間も小鳥たちに誘われて、そんな場所へゆくのだろう。今頃はさぞ紅葉が美しいだろうと想像する。
大関博美
 「ここからの眺めを選ぶ」
天気の良いある日、双眼鏡を持って、バードウオッチングに出かけられたのでしょうか、眺望の良いテラスで、双眼鏡を覗き込む。秋の残りの木の実などを啄む小鳥たちの仕草に、しばし癒やされる日である。
牧内 登志雄
 鳥にも自分の気に入りがありますね。餌場であったり、敵から身を守るための定点観測地であったり。「眺めを選ぶ」のですから、きっと心が安らぐ場所なのでしょう。そんな表情でちょこんと枝を揺らす、可愛い表情が見えてきます。今の季節なら白いエナガが表れるかも。
野島 正則
 ここ、この場所は、作者も好きな眺めの良い場所なのでしょうね。
仲 寒蝉
 小鳥としてもいい眺めのところに来たい・・・のでしょうね。
十河 智
 小鳥が飛ぶ山野、峠にそんな小鳥の姿を見るスポットがあったりする。そこは眺めも良くて、それが見たくて何度も行ってみるのだ。