香天集11月7日 岡田耕治 選
釜田きよ子
シーソーの支点がずれて神無月
秋高し本気で走ることにする
風呂敷に何でも包み秋の空
身体のツボを捜している夜長
前塚かいち
後の月見えているかと電話する
応援の太鼓なら良し秋の空
売る人と買う人のいる通草かな
無花果や絵手紙に青配色す
宮下揺子
収束の根拠は何と林檎むく
木犀花「あのね」と話し始めたる
セイタカアワダチソウ捨て猫をもらう
椅子軋む待ち受け画面は雪空
久堀博美
夕刊を膝に置く癖温め酒
温め酒大きな指の創テープ
温め酒工事の灯近づきぬ
仏壇のゆっくり冷める温め酒
北村和美
十歩先のピンクの背広秋深し
二人してふわりと歩く黄落期
あちこちの犬の歯型に小鳥来る
顎を上げ色なき風のビブラート
嶋田 静
虫の声止んで鳴き出す家路かな
寄りそうてスッと刺し行く秋の蚊よ
飛ぶ時の秋蝶の羽くっきりと
青と黄の溶け合ってくる螢草
楽沙千子
大豆干す莢のはじける日の匂い
鋼打つリズムを変えず秋暑し
締切に間に合わすべし秋灯
相づちのまじる傾聴秋扇
吉丸房江
新米を送る良い子を産むように
コスモスが見送っている通過駅
秋晴や畑仕事の開放感
子六人育てし母や茄子の花
垣内孝雄
足裏の土の乾きよ鍬納
ふくろふのこゑは闇へのパスワード
はつ冬の螺旋を巻き切るオルゴール
缶蹴つて冬より前期高齢者
*河内長野市にて。
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