俳句物語(7) 岡田耕治
給食の伊予柑を分け下足箱 俎 石山
ポケットに八朔ひとつ帰りけり
給食に伊予柑が出た。ボクは酸っぱいのが苦手で、蜜柑もほとんど食べない。伊予柑はみかんよりもはるかに酸っぱい。母は柑橘系が好きなのでよく買ってくるが、伊予柑は小さい頃に一口食べたきりだった。
担任は、給食を残すことを許さないタイプなので、バレないようにそっとポケットにしまった。伊予柑の小ささがありがたかった。給食を食べながら、「ワタシ、伊予柑大好き」と言う女子がいた。母が柑橘類を好むことがボクには理解できないように、彼女が伊予柑を好きというのも、全く分からない。なぜあの中途半端な酸っぱさが良いのだろう。
放課後、今日は部活動がないため、すぐに下校するよう放送があった。昨年から土曜日か日曜日のどちらかは必ず休み、平日も一日休むという学校の方針が出たので、水曜日は部活動のない日になった。
下足場でその伊予柑好きの女子とばったり会った。ポケットにしまってあった伊予柑を取り出して、
「これ、食べる?」
「ありがとう。大好き」
「ボクも好きだけど、母が好きなんで持って帰るとこだった」
「じゃあ、これお返し」
彼女のリュックから出てきたのは、ボクのポケットに入りきらないほどの八朔だった。