2017年2月28日火曜日

冬の森一人歩きを楽しめり 茨木和生

冬の森一人歩きを楽しめり 茨木和生
「運河」3月号。春の森は二人で、夏の森は四人で、秋の森は六人でと、それぞれの季節に森を訪れる人数を想像しました。やはり冬の森は、「一人歩き」が似合います。茨木さん愛用の長靴は、それを玄関に出すと必ず晴れるとお聞きしたことがあります。きっとその長靴を履いて、季語を訪ねながら一人歩きを楽しんでおられるのでしょう。
*泉南市埋蔵文化センター前の緑。

2017年2月27日月曜日

「音楽」18句 岡田耕治

音楽  岡田耕治

如月の細身に黒をまといけり
センサーの少し遅れて春灯
蕗味噌や酒四合をもたらされ
田楽に二つの言葉つながりぬ
誰よりも研究が好き蕗の薹
春の家どこから出てもいいと言う
ガソリンを満タンにして春の海
犬ふぐりだけの日向となりにけり
二本目に添えられてくる木の芽和
風ありて駅のホームの薄氷
ジーンズの男を穿いて青き踏む
おしゃべりな三回生の春休
地下鉄に長く乗る日の春嵐
春の浜紐一本を這わせゆく
音楽の中を降りやむ春の雪
ゆっくりと急いでいたる春時雨
如月の首伸ばし飛ぶこうのとり
鶯にサンドイッチを開きけり
*高槻市カフェ・コモンズにて、インプロ・ワークショップに参加。

2017年2月26日日曜日

香天集2月26日 木村博昭、橋爪隆子、中嶋飛鳥ほか

香天集2月26日 岡田耕治 選

木村博昭
春浅き肺の中なる大気かな
ミッフィーに涙がこぼれ冴返る
犬に語ることを大事に春の雲
片方はうつつにありて春の夢

橋本惠美子(2月)
右耳に回り込みたる空っ風
水仙の確たる意志やよりかかる
極月の体温伝う聴診器
ハンガーの歪みを戻し大晦日

橋爪隆子
小春日の軍手を使い切ることに
空白を廻る二月の観覧車
流される前に並べて雛の顔
寒鯉の少し動ける日影かな

中嶋飛鳥
きさらぎの認知症外来予約する
きさらぎや引算の七繰返し
きさらぎの顔をあからめ男坂
きさらぎの鏡に映るもう一人

澤本祐子
からからに乾き大根の真っ白に
寒き夜の窓の明りを満たしおり
紅梅や思わぬ顔の近づきて
いつまでも留守の紅梅点りけり

橋本惠美子(1月)
定刻に通院を終え冬うらら
要塞の冬をピカチュウ歩き出す
冬灯工事現場を囲みたる
葉牡丹や力を緩め立ちいたる

羽畑貫治
春日傘リハビリの膝軽くなる
薔薇の芽を軟らかくして妻老いる
四つ這いに手応えのある蜆かな
春炬燵人を恋しくしていたる

北川柊斗
白梅や骨董市の銀の皿
ミルフィーユしやりりと崩し春隣
斑雪光と影を綯い交ぜに
尖りたる一面の記事冴え返る

竹村 都
石段の下で手合わす初詣
歓声の高なるときをどんど焼
福笑緩みたる紐直したる
点滴のもうすぐ終る冬夕焼

永田 文
幾何学の模様をなぞり毛糸編む
きらきらと闇のとけゆく氷柱かな
日の匂い水の匂いの猫柳
囀や鴉の声を大きくし

古澤かおる
婚活のプラネタリウム春立ちぬ
節分や鬼は元々大食らい
梅林に日和の満ちてベレー帽
太巻を切った面から春めきぬ


*昨日「香天」上六句会のホテルのエントランス。

2017年2月25日土曜日

背骨また地軸の一つ冬の雨 渡辺誠一郎

背骨また地軸の一つ冬の雨 渡辺誠一郎
「俳句四季」3月号。甲野善紀さんの本を読んで、骨を意識して立ったり歩いたりするようになりました。「地軸」には、大地の中心という意味がありますから、この背骨をもつ私を中心に大地があると、東北の冬の雨の中に立ち尽くしながら、そう感じている渡辺さんの姿が見えるようです。
*天王寺キャンパスの水溜まり。

2017年2月24日金曜日

身の洞を抜けて桜の洞に入る 柿本多映

身の洞を抜けて桜の洞に入る 柿本多映
「俳句四季」3月号。コメントに「卒寿のいまいよいよ自在に」とあります。自分自身の体を抜けて、桜の洞の中に入る。桜を出て、しばらく宙を飛んで、この世を眺めたあと、また自分の体の中に戻ってくる。そんな自在さでしょうか。それにしても、私たちは「洞」に宿を借りているのですね。この洞、ていねいに扱わねば。
*大阪教育大天王寺キャンパスの桜の木。

2017年2月23日木曜日

白魚の喉に狂へるいのちかな 照井 翠

白魚の喉に狂へるいのちかな 照井 翠
「俳句四季」3月号。「白い紙」と題された一文に、手書きの句稿が添えられています。生きたシロウオをポン酢に泳がせて、口の中へ。噛むまでもなく元気なシロウオは、胃の中へ進みます。喉でしばらく暴れたのは、人体のあまりの暗さゆえでしょうか。私たちは、このようにいのちをいただいて生きていくのですね。翠さんは、基本的に俳句手帳は使わないとのこと。東北大震災で避難所での生活をされたときも、「この白い紙は心の支えだった」と。
*貝塚市立東小学校、校長室の絵画。

2017年2月21日火曜日

寒林は地球が呼吸するところ 花谷 清

寒林は地球が呼吸するところ 花谷 清
「俳句α」増刊号「大地の俳句」。外に出ると今も寒さが襲ってきますが、路面の寒さを抜けて寒林にまで足を伸ばしますと、木々は静かに揺れています。路面を往き路面を復るのではなく、寒林まで足を運ぶことによって、自分自身がほぐされていくようです。そこは、この地球が呼吸するところですから。
「俳句α」の増刊号の「大地の俳句」特集の212結社の中に、「香天」も参加しています。よろしければ、ご覧下さい。
*金剛生駒紀泉国定公園。

2017年2月20日月曜日

「着信」15句 岡田耕治

「着信」 岡田耕治

春の雲しばらく口に含みたる
顔つきを取り戻したる春の雲
むずむずとバレンタインの近づきぬ
学ぶ人に学んでいたり春炬燵
猫柳これから雨になると言う
遠くまで行き白梅を観て来たと
速力を取り戻したる白魚舟
春泥の底を浚えるシャベルかな
薄氷の時間が離れゆきにけり
指先に痺れが残り春の水
文体の明るくなりし大試験
掌を鳴らしちりめん雑魚を吸う
着信のランプが点り春セーター
様様なことばを貼って卒業す
テーブルを大きく使い春の月


*大阪府柏原市内の桐。

2017年2月19日日曜日

香天集2月19日 石井冴、谷川すみれ、立花カズ子

香天集2月19日 岡田耕治 選

石井 冴
綿虫や周りの音を消していく
綿虫の浮いては沈む瞳かな
綿虫やうちには連れて帰れぬと
綿虫の浮くにも力要るらしく

谷川すみれ
鳥帰るひとつの大きな鳥となり
白梅の無音の空を切なくす
春炬燵二人になれば火を消して
言霊の深きまでゆく春の風邪

立花カズ子(1月)
年詰まる吾そっくりの遺影かな
猛吹雪ひと呼吸置き突っ走る
ボール蹴る声のひびきて空っ風
癌治療話す知人の冬の月

立花カズ子(2月)
女子走者梅の香りをまとい来る
朝から春の日差しが部屋に射す
物置の埃にまみれ遍路杖
方丈へ梅の香りを満たしけり

*豊中市ステップホール。リビングライブラリーには40名の参加者。

2017年2月17日金曜日

花にまだ間のある雨に濡れにけり 久保田万太郎

花にまだ間のある雨に濡れにけり 久保田万太郎
『久保田万太郎全句集』桜はまだまだ開きませんが、その蕾は空に向かっています。桜の咲くまでの時間と、降り出した雨の今との間(ま)が、絶妙です。「菊池寛逝く。…告別式にて」との前書きがありますので、ともに活動した先輩の止まってしまった時間が、このような句を生み出したのでしょう。万太郎は、下町の生活と情緒を愛し、好んで市井人の生活を描きましたが、それが菊池寛にも通じていくようです(後に菊池寛賞を受賞)。
藤井寺市立道明寺小学校の桜の木。

2017年2月16日木曜日

星が飛ぶ人に没後といふ時間 ふけ としこ

星が飛ぶ人に没後といふ時間 ふけ としこ
『ヨットと横顔』創風社出版。一つ二つでしたら、流れ星と呼ぶのでしょうが、あとからあとから星が流れ始めますと、まさに「飛ぶ」が相応しいです。その光の中にいますと、大切な人が亡くなったあとも、自分を励ましてくれているように感じられます。私に直接働きかけるのではなく、その人のがご自分の没後を大切に生きておられるその在り方によって。励ましは、ふけさんのこの俳句とエッセイ集の息づかいにも通じているようです。菊を焚く、そのために小菊を育てる、ふけとしこさんならではのエピソード満載の一巻です。御出版、おめでとうございます。
*大阪教育大柏原キャンパスへ向かうエスカレーター。

2017年2月14日火曜日

寄鍋に決定的な一人欠く 仲 寒蝉

寄鍋に決定的な一人欠く 仲 寒蝉
「港」2月号。寄鍋は大勢で囲むに限ります。こんなにもたくさん集まったのに、「決定的な一人」が来られなくなりました。その場の賑わいをたのしみながら、それぞれがその一人のことに思いを馳せます。その一人ひとりの思いも含めて、寄鍋は煮え立っているのです。鍋一つでこんな重層的な書き方ができるのですね。寒蝉さん、還暦、おめでとうございます。
*「牙城・寒蝉と仲間たちの還暦を祝う夕べ」新大阪ワシントンホテル。

2017年2月13日月曜日

白息のくもりが走りトランペット 中村静子

白息のくもりが走りトランペット 中村静子
「香天集」。トランペットは、家の中では鳴らせませんので、自転車で海辺にやってきました。海からの風に向き合ってケースから取り出しますと、息のくもりがトランペットを走りました。寒風の中ですから、白い息です。これからしばらく、この風に向かって、思い切りこの息をマウスピースに通すことにします。
*還暦を迎えた島田牙城さんと、新大阪のホテルにて。

2017年2月12日日曜日

香天集2月12日 中村静子、宮下揺子、中辻武男ほか

香天集2月12日 岡田耕治 選

中村静子
枯蟷螂力を見せて飛び立ちぬ
白息のくもりが走りトランペット
潮の香を集めて爆ぜる缶焚火
煮凝の震えて滑リ落ちにけり

宮下揺子
喧噪の中の静けさ冬木の芽
染付の角皿に盛り冬苺
風穴の奥の観音寒の水
母子手帳見せてもらいし春日向

中辻武男(1月)
新春の陽射しの届き奥座敷
水仙のしぶき煌く雨上り
冬将軍雲連れ去ってゆくところ
日溜りにありて菜種の返り花

岡田ヨシ子
派手なものばかりが入り福袋
宇宙まで届いていたる初詣
生協の福豆届き鬼と会う
いつの日か終りありしか寒の鯉

中辻武男(2月)
冬籠り子らの笑顔に和むなり
梅の香に足を止めたる友の声
日向ぼこ腰上げるとき影若し
立春の暗雲今だ覚めやらず

*岬町小島。

2017年2月11日土曜日

「大きな蛇」18句 岡田耕治

大きな蛇 岡田耕治

黄梅や身の内側をあぶりたる
上体を反らしてしまう春の雲
鶯の初音との距離確かにす
ニスを塗る春寒の窓開け放ち
恋猫や光る瓦を渡り来る
誰にでもなれる人あり春の夜
春雨や隣の声を近くして
唇を尖らせている春の夢
白梅を行ったり来たりしておりぬ
音立てず大きな蛇が穴を出る
真ん中へすべり込みたる春の泥
春眠の言葉をふっと失いし
春雪が鳴らしていたるフードかな
春雪のはじめに窓を開きけり
白魚の微かにぬくき店の情
老梅のたわみやすきを愛しめり
牡丹雪駅の中にて飲みはじむ
髪形を短くしたる春愁

*オーストラリア先住民によるアボリジナル・アート。

2017年2月10日金曜日

鍋焼をはふはふ啜る仲直り 三好つや子

鍋焼をはふはふ啜る仲直り 三好つや子
「香天集」。親子にしても、夫婦にしても、いくつもの火種を宿して暮らすことになります。時には喧嘩したり、言い争ったり。でも、共に暮らすことは、共に食べること。まして鍋焼きうどんなら、「はふはふ」と食べ合っているうちに仲直りしてもいい気分になります。
*長岡京市の中野家住宅。

2017年2月9日木曜日

母の母その母に母春の雪 玉記 玉

母の母その母に母春の雪 玉記 玉
「香天集」。母の母、私からすると母も祖母もその姿をすぐに心にのぼせることができます。ところが、祖母の母となると、写真は見たことがありますが、はっきりとは意識できません。しかし、命はそのようにして連綿と続いてきたのです。この春の雪のように、明るく、寒く、つつがなく。
*立命館中学校・高等学校の茶室。

2017年2月8日水曜日

あめ降るや降らざるや雨生真面目な雨降りてこよ君たはぶれよ 高石万千子

あめ降るや降らざるや雨生真面目な雨降りてこよ君たはぶれよ 高石万千子
歌集『外側の声』六花書林。今にも雨が降り出しそうな空を見ていますと、早く降り出して欲しいと思うことがあります。どうぜ降るなら「生真面目」に、蕭蕭と降ってほしいものです。その雨に出て、体じゅうを濡らしますから、あなたも出てきて雨をたのしみましょう。
*立命館中学校・高等学校の学習スペース。

2017年2月7日火曜日

冬の虹サドルを少し上げて漕ぐ 三木基史

冬の虹サドルを少し上げて漕ぐ 三木基史
「俳句」2月号。何時もの自転車でも、少しサドルを高くすると、スピードが出ます。急いでいるわけではないのですが、何時もと違うスピードをたのしみながら、街を走ることにします。なぜって、何時もと違う冬の虹が自分を励ましてくれているようだからです。
*八尾市立桂中学校の新校舎。

2017年2月6日月曜日

「ココルーム」17句 岡田耕治

ココルーム 岡田耕治

壇上へ体育館のストーブ鳴る
原稿を挟み込みたる蒲団かな
  志賀直哉旧居三句
志賀直哉旧居へと冬登り来る
山茶花へ直哉の窓を開きけり
それぞれの直哉の机春を待つ
冬の日に洗われている岸辺かな
セーターや大きな腰を縛りたる
熱燗に壊れていたる咄とも
冬芝の等身大に寝ておりぬ
一つずつせっかちになり水仙花
答案に潜んでいたる木の葉かな
寒明ける中学生の目の高さ
スプーンを熱くしている年の豆
手を置いて確かめている蕗の薹
  ココルーム三句
UFOをキャッチする庭寒明ける
春立ちぬ上田假奈代の着物より
外套を脱いで心を包みけり


*釜ヶ崎のココルーム入り口のポスター。

2017年2月5日日曜日

香天集2月5日 玉記玉、久堀博美、三好つや子ほか

香天集2月5日 岡田耕治 選

玉記 玉
異次元の臍へと独楽を打ちにけり
人の形に人が彫る木やしぐれ
大寒の天へ黙したる蛇口
母の母その母に母春の雪

久堀博美
凍谷に入るや足音よく響き
耳遠くする雪の夜を早寝して
年の豆鬼を味方にしていたる
パーティーの最後に出たり花菜漬

三好つや子
鍋焼をはふはふ啜る仲直り
出不精の猫の爪切る小正月
コンビニに黙の集まり冬帽子
かみあわぬ母との会話へそみかん

釜田きよ子
日の光鍬に集めて冬耕す
今日はこの占い信ず竜の玉
餅を焼く日本人の体形で
暖めてやりたくなりぬ寒卵

浅野千代
綿雪の中を柩の通りけり
寒菊のひとつ残らず火葬さる
厳寒の温きお骨を拾いけり
蓮の骨より人骨の美しき

藤川美佐子
駅までの道のり遠し秋燕
秋の蝶男の中をもつれけり
柔らかく猫に踏まれて龍の玉
風の中独りの蒲団干しいたる

森谷一成
白目をむく寒暁の木や無慚
丸太のような並木を四日職安へ
手袋を外しハローワークの端末へ
高齢者就職支援セミナー水洟かむ

坂原 梢
十二月こうのとり二羽睦まじく
山眠るそのふところを騒ぎけり
初旅や水産学科終了し
初ネイルこの歳にして挑みたる

竹村 都
記念樹の山茶花に子ら遠くなる
年忘れ紙飛行機を飛ばし合い
初恋の話となりて年忘れ
柚子風呂や長き月日の流れ出し

藤川美佐子
空席のあらわになりて鳥渡る
大まかに印す予定や十二月
十二月少し早目に家を出る
年の暮音がゆがんで通りけり

小崎ひろ子
超新星欠けたるに空にぎやかな
言うなかれ人救う絵をそらごとと
暖房のきいた部屋なりごき団子
核心はそらされ人間団子とな

越智小泉
受験絵馬高き処が先ず埋まり
年玉の硬貨曾孫が振りつづけ
大勢の集いを待ちて据り鯛
今朝の雪鋭く啼きて飛び立ちぬ

村上青女
坂登るろう梅の香に背を押され
寒風に負けじと立ちて十九日
パキパキと燃える薪あり寒の昼
雪雲の沖につながる船の揺れ

*奈良市の志賀直哉旧居。開かれた庭が書斎の机を照らして。

2017年2月4日土曜日

凩にけだものの頭を低く行く 小澤 實

凩にけだものの頭を低く行く 小澤 實
「俳句」2月号。こがらしの吹く川沿いを歩いていますと、水の少なくなった川の中を猪がノシノシと歩いていました。上流へとお互いに頭を低くして、しばらく並行していきます。「こんな寒い中をイノシシもたいへんやね」「あんたたち人間も、えらい世の中になってますな」などと会話しながら。
*釜ヶ崎ココルームにて。

2017年2月2日木曜日

枯葉枯葉その中のひとりごと 大牧 広

枯葉枯葉その中のひとりごと 大牧 広
「港」2月号。枯れ尽くした森にあって、枯葉に囲まれて思索する作者が目に浮かびます。思索は、ひとりごととなって、口をついて出て来ます。例えばそれは、同時発表の次のような句でしょうか。「原発を許さぬ雪となりにけり」「メディアもう上ばかり見て年暮るる」。ひとりごとは、時には意志となって、時には社会へのまなざしとなって現れるのです。
*奈良公園。

2017年2月1日水曜日

入学の日の雨冷えの廊下なる 中田 剛

入学の日の雨冷えの廊下なる 中田 剛
「俳句界」2月号。幼稚園や保育所では、遊び中心の生活を送ってきた子どもたち。でも、入学となると、教室の机と椅子にしばられたいないといけません。それは、これから続く勉強の連続を想わせる「雨冷え」の日でした。それまでは遊戯室を中心とした広広とした廊下だったのに、急に直線の、狭い廊下になっています。作者はでも、そのことをマイナスとしてだけ捉えてはいません。その中に、自分自身を見つけ、発揮していく学びもきっとあるはずだと、そんなおもいが、「廊下なる」という止め方から読み取れます。
*奈良市志賀直哉旧居。