2017年2月5日日曜日

香天集2月5日 玉記玉、久堀博美、三好つや子ほか

香天集2月5日 岡田耕治 選

玉記 玉
異次元の臍へと独楽を打ちにけり
人の形に人が彫る木やしぐれ
大寒の天へ黙したる蛇口
母の母その母に母春の雪

久堀博美
凍谷に入るや足音よく響き
耳遠くする雪の夜を早寝して
年の豆鬼を味方にしていたる
パーティーの最後に出たり花菜漬

三好つや子
鍋焼をはふはふ啜る仲直り
出不精の猫の爪切る小正月
コンビニに黙の集まり冬帽子
かみあわぬ母との会話へそみかん

釜田きよ子
日の光鍬に集めて冬耕す
今日はこの占い信ず竜の玉
餅を焼く日本人の体形で
暖めてやりたくなりぬ寒卵

浅野千代
綿雪の中を柩の通りけり
寒菊のひとつ残らず火葬さる
厳寒の温きお骨を拾いけり
蓮の骨より人骨の美しき

藤川美佐子
駅までの道のり遠し秋燕
秋の蝶男の中をもつれけり
柔らかく猫に踏まれて龍の玉
風の中独りの蒲団干しいたる

森谷一成
白目をむく寒暁の木や無慚
丸太のような並木を四日職安へ
手袋を外しハローワークの端末へ
高齢者就職支援セミナー水洟かむ

坂原 梢
十二月こうのとり二羽睦まじく
山眠るそのふところを騒ぎけり
初旅や水産学科終了し
初ネイルこの歳にして挑みたる

竹村 都
記念樹の山茶花に子ら遠くなる
年忘れ紙飛行機を飛ばし合い
初恋の話となりて年忘れ
柚子風呂や長き月日の流れ出し

藤川美佐子
空席のあらわになりて鳥渡る
大まかに印す予定や十二月
十二月少し早目に家を出る
年の暮音がゆがんで通りけり

小崎ひろ子
超新星欠けたるに空にぎやかな
言うなかれ人救う絵をそらごとと
暖房のきいた部屋なりごき団子
核心はそらされ人間団子とな

越智小泉
受験絵馬高き処が先ず埋まり
年玉の硬貨曾孫が振りつづけ
大勢の集いを待ちて据り鯛
今朝の雪鋭く啼きて飛び立ちぬ

村上青女
坂登るろう梅の香に背を押され
寒風に負けじと立ちて十九日
パキパキと燃える薪あり寒の昼
雪雲の沖につながる船の揺れ

*奈良市の志賀直哉旧居。開かれた庭が書斎の机を照らして。

0 件のコメント:

コメントを投稿