2017年2月26日日曜日

香天集2月26日 木村博昭、橋爪隆子、中嶋飛鳥ほか

香天集2月26日 岡田耕治 選

木村博昭
春浅き肺の中なる大気かな
ミッフィーに涙がこぼれ冴返る
犬に語ることを大事に春の雲
片方はうつつにありて春の夢

橋本惠美子(2月)
右耳に回り込みたる空っ風
水仙の確たる意志やよりかかる
極月の体温伝う聴診器
ハンガーの歪みを戻し大晦日

橋爪隆子
小春日の軍手を使い切ることに
空白を廻る二月の観覧車
流される前に並べて雛の顔
寒鯉の少し動ける日影かな

中嶋飛鳥
きさらぎの認知症外来予約する
きさらぎや引算の七繰返し
きさらぎの顔をあからめ男坂
きさらぎの鏡に映るもう一人

澤本祐子
からからに乾き大根の真っ白に
寒き夜の窓の明りを満たしおり
紅梅や思わぬ顔の近づきて
いつまでも留守の紅梅点りけり

橋本惠美子(1月)
定刻に通院を終え冬うらら
要塞の冬をピカチュウ歩き出す
冬灯工事現場を囲みたる
葉牡丹や力を緩め立ちいたる

羽畑貫治
春日傘リハビリの膝軽くなる
薔薇の芽を軟らかくして妻老いる
四つ這いに手応えのある蜆かな
春炬燵人を恋しくしていたる

北川柊斗
白梅や骨董市の銀の皿
ミルフィーユしやりりと崩し春隣
斑雪光と影を綯い交ぜに
尖りたる一面の記事冴え返る

竹村 都
石段の下で手合わす初詣
歓声の高なるときをどんど焼
福笑緩みたる紐直したる
点滴のもうすぐ終る冬夕焼

永田 文
幾何学の模様をなぞり毛糸編む
きらきらと闇のとけゆく氷柱かな
日の匂い水の匂いの猫柳
囀や鴉の声を大きくし

古澤かおる
婚活のプラネタリウム春立ちぬ
節分や鬼は元々大食らい
梅林に日和の満ちてベレー帽
太巻を切った面から春めきぬ


*昨日「香天」上六句会のホテルのエントランス。

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