香天集11月6日 岡田耕治 選
浅海紀代子
ドアを閉め私の夜長始まりぬ
鈴の付く鍵持ち歩く秋夕べ
花種を蒔いて老いるを忘れおり
会うたびに遠くなりゆく鰯雲
釜田きよ子
爪を切る金木犀の香の中に
新しき箒の節目小鳥来る
秋深む我に似てくる弟よ
小鳥来る小学生のように来る
垣内孝雄
冬ともしコーヒーミルの磨れる音
冬ざるる夜中に部屋を走る猫
ガンダムのプラモデル立て冬に入る
つちくれになりを沈むる八つ頭
牧内登志雄
墨染の袖に纏わり照紅葉
親方の一服を為す松手入
天を突く冬芽の赤き勁さかな
外套の内ポケットに名刺古る
吉丸房江
村まつり三年ぶりに生きかえり
外を見て話したくなる温め酒
秋茄子キュッキュッと揉んでおく朝餉
新米のちらし寿司へと友招く
秋吉正子
夏終わる三百円のシャツを買い
当たりでも外れでもなし曼珠沙華
発表を終えて飛び出す秋の空
識ることの憂いを増やし青蜜柑
大里久代
露の玉心が揺れてはじけ飛ぶ
風さそう赤よりも黄の彼岸花
北岡昌子
虫の声信号を待つ同じ時
運動会少なくなぬ児童数
中田淳子
朝顔の一輪忘れられし路地
訪れん花すすき満つ無人駅
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