2016年8月7日日曜日

香天集8月7日 中嶋飛鳥、玉記久美子、森谷一成…

香天集8月7日 岡田耕治 選

中嶋飛鳥
息止めるその十秒の涼しさよ
蝉鳴きて山の容の歪み出す
百物語早くも喉の渇きたる
蝉時雨時計の見える椅子の位置

玉記久美子
水着より水奪いたるベンチかな
詩の国のグラジオラスの反っている
スプーンに夏の渚というところ
真っ先に鳴りだす風鈴はどれだ

森谷一成
グラビアに飽きて蛙の目借時
横長の墨画の如くさみだるる
黒南風に抱く真白のぬいぐるみ
緑陰の少女に降ってくるバトン

大杉 衛
じゃんけんの最初はみんな甲虫
昼寝から覚め少年のカタカナ語
青すすき草月流に靡きけり 
停車場と波止場と西日差すところ

竹村 都
黒南風や声高くなる阿弥陀経
梅雨あがる磯の香のするバーベキュウ
ここからは海だったと言う麦藁帽
暑き日の貨物列車の続いている

羽畑貫治
傾きて退院をする今日は夏至
青大将家主を看取るつもりらし
遠出する行先決めず土用浪
何事も素直に聴いて夏雲雀

越智小泉
来ては去り又来ていたり夏の蝶
海開き靴に靴下入れて持ち
蝉しぐれ難しきこと考えず
手と足を動かしている昼寝覚

中辻武男
青蘆の光みなぎり河川敷
冷奴薬味を溢れさせている
風鈴の音続き出す日暮かな
天上の友が見ている百日紅

村上青女
水をやるひぐらしの声確めて
一人泳ぐ市営プールの秋茜
投錨の音に始まり夏の朝
平和への祈り果てなき星祭


※大阪教育大学のある金剛生駒紀泉国定公園。

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