2016年11月6日日曜日

香天集11月6日 久堀博美、高橋もこ、中嶋飛鳥ほか

香天集11月6日 岡田耕治 選

久堀博美
ひつじ田の歪んできたる平行線
種無しに種の痕有り富有柿
剥く前の蜜柑の艶を論じけり
柚子風呂に浸りすべては過ぎしこと

高橋もこ
先端がとがり冬芽になる途中
十分に優しく生きて古暦
白昼を大股でくる梟よ
まな板にのりそこねたる海鼠かな

中嶋飛鳥
喝采に似て倒木の菌どち
林檎齧る弟の剥きくれしを
あろうことか野うさぎが二の足を踏む
山盛りの蜜柑は小ぶり話し込む

今川靜香
秋空に混ぜて絵具の月の色
秋日向光るものみな磨きたし
ねんごろに銀器を磨き蚯蚓鳴く
ヘルメット被る案山子の斜めなる

前塚嘉一
腰痛の治まっている柿落葉
鰯焼く敗北力というがあり
銀杏落葉手品師例う唄歌う
それぞれが名札をつけて秋明菊
(森本恵子さんのお庭の前にて)

森谷一成
定年の朝のおらびの駅に居る
懐にジュリヤン・ソレル退職す
細道のそびらに釣瓶落しかな
草の穂の夕暮れ白き手に愛撫

浅野千代 
どの記憶より鮮やかな今や冷ゆ
天高し見つからぬほど小さきもの
忙しき人羨みて秋の虻
置き去りの退屈の底鳥威

大杉 衛
どんぐりを真横に並べ数えけり
純白の琺瑯質や月渡る
夕映えて野菊の場所に戻りけり
澄みにけり竜宮見える水族館

小崎ひろ子
川底に沈みてすがし羅生門
流路から運河へ月の離れゆく
佐保姫の名を付す川に歌碑数多
飼われたる目高の群れに会いしこと

羽畑貫治
堂堂と地虫の鳴いて過疎の里
天の底抜けて水攻め敬老の日
地面まで膝が曲がらず牛蒡引く
筋肉を鍛えていたり帰り花
*岬町小島の海岸、冬が近づいてきました。

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