香天集10月29日 岡田耕治 選
砂山恵子
高きに登る本心を言はぬまま
渡り鳥スコアボードにゼロ続き
南瓜の大きさをしてたなごころ
残る虫宇宙の初め語りけり
谷川すみれ
国境の水平線の初日の出
掘削のはじめより増え水仙花
灯台は見たか漂流の凍る手を
兎抱くすべての愛のはじまりに
大杉 衛
国旗もて十日の菊を包みけり
鈴虫のひからぬように鈴を抱く
澄むために水族館の水となる
考える虫となりけり残る虫
加地弘子
小鳥来る郵便受けの音させて
手間かけぬ枝豆にして撓わなり
蓮の実翔んで新たなストーリー
眦を紅く跳ね上げ秋祭
古澤かおる
立ち上がるミトコンドリア乱れ萩
麿の乗る和舟の進み十三夜
涼新たすべての紙に閉じ穴を
柔らかき食パンの耳花サフラン
北川柊斗
番組のみんなが付ける赤い羽根
十六夜の君は半分無垢で居る
折り鶴の首のあたりが身に沁みて
月明のひそやかなれど白き花
羽畑貫治
干柿の夕日に染まる千の串
枯蟷螂高く跨り鎌かざす
ピン球を高笑いして冬の鵙
アクセルを目いっぱいに大枯野
越智小泉
秋祭耳を手綱の肩車
一歩ずつ童先導するばった
静寂のあとの喚声運動会
紅葉を描くクレヨン十二色
西嶋豊子
枝豆や色よくゆでる妣のため
運動会あの子今年も一番に
紅葉のトンネル子らの列乱れ
秋の風木椅子半分ゆずりあい
*大阪教育大学附属池田小学校にて。
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