2018年3月18日日曜日

香天集3月18日 玉記玉、三好広一郎、加地弘子ほか

香天集3月18日 岡田耕治 選

玉記玉
背表紙をたどる白い手抱卵期
息まるく海へ吐きだし卒業す
石垣の城となるまで陽炎えり
まっ先に風船割れる音を抱く

三好広一郎
石窯のピザやわらかき受胎かな
フランスパン尾骶骨まで春温し
この家のあとはどうする春彼岸
若い消しゴムの交差する日永

加地弘子
風船の軽さを残し飛びゆけり
つき合いの永くなりけり春の月
クロックスのサンダルにして風光る
鞦韆に七十路の背を押されたる

中嶋 飛鳥
定刻に始まっている蕗の薹
啓蟄の行頭一字下げてあり
涅槃西風からだの声を確かめる
三月や大き漢と歩き出し

立花カズ子
犬ふぐり朝のひかりの這うように
蓮如忌や大阪城の陰にいて
春泥の乾きて子等の靴の数
信楽の壺に広がり桃の花

永田 文
追いぬいて走りゆく子の風光る
鹿の目の鋭くなりて寒の月
鳥帰るいつか日輪西に寄り
鳥帰る子ら飛ばし合う絮の上

中辻武男
春嵐鉄路を渡る民の声
北国を偲んでいたり雪割草
山桜薫れど拒む膝頭
遠く来て遠くへ鳥の帰りけり

岡田ヨシ子
寒の月外灯を消し手を合わす
雛流し子の成長を乗せてゆく
若布茹でたちまち浜の風起こる
カレンダー彼岸の入りの近づきぬ



*大阪教育大柏原キャンパスにて。

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