大根の届きて言葉増えにけり 大牧 広
『朝の森』ふらんす堂。娘夫婦が大根や白菜を菜園で作っているので、我が家にも大根が届くことがある。すると、私と妻との会話が急に増える。「大きいのができたね」「毎日、菜園に行ってるみたい」「そう、子どもたちも手伝ってるのかな」「学校から帰ったら、収穫してくれるそうよ」「自分ちで育てて、自分が引いた大根、きっと美味しいやろうね」。句集の帯には、「敗戦の年に案山子は立つてゐたか」という句を挙げ、「戦争体験の一証言者として 老境に安んじることなく 反骨精神をもって俳諧に生きる著者の 渾身の新句集。」とある。そのような精神を前面に立てながら、しかし、このようなヒューマンな句が見られるところが、大牧広さんの何よりの魅力である。
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。
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