2019年4月28日日曜日

香天集4月28日 石井冴、玉記玉、森谷一成、柴田亨ほか

香天集4月28日 岡田耕治 選

石井 冴
はこべらを啄む嘴をもらいけり
若葉風伸び縮みする犬と人
電線が怖ろしくなる夕桜
なまぬるい水を連れ出す春日傘

玉記玉
山笑うカスタネットとする両手
水菓子の緋のひんやりと養花天
桜貝拾うて天女ともならず
椿落つひとつは水へひとつは火

森谷一成
体さえあれば相四つ春疾風
そのなかの自白攻防春の水
クローンなりバラ目バラ科サクラ属
揚ひばり古代王城壁を欠く

柴田 亨
歩行器を先頭にして桜かな
桜の木葉裏に虫の生きるなり
彩りのわずかに増えて春彼岸
誤字脱字揺らぐ言の葉躍動す

澤本祐子
焼きたてのバターの香り涅槃西風
開け閉ての音のやさしく春障子
春の空大きく映すし水たまり
詰襟に手足のまれて春の暮

辻井こうめ
山若葉口笛先に下りてくる
ふらここの高きに小さき虫の空
万葉のならひの一つ花筵
花の雨山純色に戻りゆき

橋爪隆子
投宿の窓にあふれて花の雲
花の冷えサランラップの端探す
春灯エンドロールの尽きるまで
チューリップ笑い転げて散りゆけり

浅海紀代子
迎えらる大樹一本囀りて
花の坂昔の空へ登りゆく
我が影の次第に淡く花の下
春の窓辺つぎつぎ猫の席となり

中濱信子
花冷えや観音像の下向きに
牡丹に手を添えやればはらはらと
裏白き広告を選る土筆かな
点滴の管の路線図薄氷

釜田きよ子
つくしんぼみんな元気な男の子
AIに馴染めぬままに鳥帰る
黄金週間孔雀は羽根を閉じしまま
うぐいす餅食べて一言ホ―ホケキョ

木村博昭
それぞれの笑顔の高さつくしんぼ
アオザイも花衣なる白鷺城
骨拾う前の飲食目借時
風まかせ水まかせなる落花かな

古澤かおる
風船のアーチをくぐる軽さかな
ぐい呑みのエスプレッソや牡丹の芽
夕暮れの川の長さに花筏
春の雨出陣式の駐車場

安部礼子
目借時男女のボーダーゾーンに居
花吹雪標をさぐる者はなし
果てしなき変身願望初蝶来
我が名をも忘れてしまう風車

羽畑貫治
憲法記念日口々に邪気払う
園庭の声の華やぐ麦の秋
卯の花腐し音たてて海豚舞う
更衣少女らの脚細くなる

岡田ヨシ子
髪に付け花片が子を飾りけり
外灯に燕の止まる頭かな
大鳥居即位の旗のなびきたる
新緑や昭和平成いま令和

北村和美
思春期の真っ直ぐに来て春の雨
光受けパンジーの黄のゴールドに
花吹雪ワンピースの裾巻き上がる
山桜長い廊下の四つんばい
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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