香天集7月21日 岡田耕治 選
岩橋由理子(5月)
ラムネ飲むトンチンカンに何もかも
青楓ゴリラの孤独通り抜け
自転車とどこまでも行く炎天下
多言語の七夕飾り濡れそぼつ
三好広一郎
蛇衣の濡れたところで切手貼る
ビアガーデン出て暗算を驚かれ
白い象少し汚れて少し洗う
部屋中に鏡バナナは腐りゆく
谷川すみれ
虫の音の周りは鳴かぬ虫の群
倒木の年輪愛し秋の空
身に入むや空しき問の爪を切る
雑草の色をつくして秋黴雨
石井 冴
種を吹く悟朗の好きなさくらんぼ
りゅうぐうのつかいに呼ばれ暑気払
水無月の硝子にすっぽんもどきかな
盛装の見開いている金魚玉
西本君代(6月)
ビルの夏噛み合う石のモニュメント
新樹光ぬるいシャワーを浴びている
恋ありて白服の皺柔らかく
調律師の鞄大きく青葉風
柴田亨
青りんご夢を分割して齧る
校正をすり抜けていく影法師
薄明の救いか罰か囀りは
ちょっと泣く六月の月に練乳
岩橋由理子(6月)
祭の灯乱舞の先の星の屑
水を打つアロエの鉢をかたどりて
片陰の人にとどまり選挙カー
空を刺すビルの地べたや蟻ひとつ
中嶋飛鳥
木下闇倣いて背を低くして
ごきかぶり滅多打ちする夢のあり
終電車金魚一尾と揺られおり
髪洗う後ろの扉開けしまま
蛍袋揺れて呪文の効いてくる
辻井こうめ
二代目の保護猫来たり金魚玉
犬用のボールを出して山清水
水草を突きてははじけ水馬
朝露を宿す笹原かほり立つ
西本君代(5月)
楠と吾旧友であり立夏
轟きて神駆け抜ける競べ馬
麦の秋燃え広がっていくように
ジンベエが少し熱あり水族館
古澤かおる
一人ずつ発ちて朝の登山口
遠雷の色をとどめる闇のあり
フライパン一つの料理日雷
クルーズ船と潜水艦の海開き
羽畑貫治
天の川何もかももうこれで良し
正座して三つ指をつく原爆忌
仏壇に両手を合わせ豆の飯
バチバチと木の幹叩く秋の蝉
北村和美
足音を逃げ出してくる沢蟹よ
メガホンの色とりどりに風薫る
靴棚に褪せた赤色梅雨長し
石舞台のそこにおかれて夏帽子
永田 文
三つ編を解けばはらりと夏匂う
雨粒を抱いて青き毬栗よ
老鶯や百寿の媼経をよむ
蝉脱皮つづけるいのち謳歌して
中辻武男
七夕の笹持ち帰る子らのあり
釣人の掛けし鈴鳴り川鰻
世界遺産日傘の波が続きたる
戸を開けて眺めていたる初蝉よ
*ホテルアウィーナ大阪にて。
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