香天集11月24日 岡田耕治 選
石井 冴
次の世は実石榴三つ産んでみる
夢殿に微熱の耳を傾ける
夢に出る父の恋人冬すみれ
すぐ青に変わる信号鹿の顔
谷川すみれ
始まりは冷たき壁の一人より
永劫に土は眠らず枯木山
立冬や遠く見てきた川に触れ
初富士の時間の中を歩きけり
辻井こうめ
靴紐のをなもみどこに落とさふか
バトラーとアシュレに散りて櫨紅葉
人知れず高野箒の花の秋
やはらかな夢を見たくて布団干す
前塚かいち
綿虫に重さありけり野球帽
糸杉の秋思を深めファン・ゴッホ
存分にグランドゴルフ神の留守
禿頭を忘れておりぬ冬帽子
木村博昭
診察の順番を待つ赤い羽根
菊花展優等生の菊ばかり
常磐木も紅葉も沈め池ねむる
残り火を踏み消して去る憂国忌
河野宗子(11月)
ラ・フランス踊りを誘う素振りして
真っ青な空の重みや石蕗の花
思い出を昭和に戻し野紺菊
金木犀ほっとひと日の終りたる
古澤かおる
野分あと三戸岡鋭治の列車着く
耳痛くなるほどの里霧深し
新しい眼鏡の行方萩は葉に
使わない切手シートと冬に入る
河野宗子(10月)
紀の川の佐和子を眺む秋夕焼
雨風にせかされてあり稲を刈る
師の茶室崩されて行く秋の暮
テレビより君が代流れ秋の冷え
永田 文
日を集め畔一面に赤のまま
ふり返り見直している返り花
終わりなき話に醒める夜長かな
山からの風や夜長をつれて来る
*昨日の上六句会、ホテルアウィーナ大阪にて。
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