2019年12月1日日曜日

香天集12月1日 玉記玉、森谷一成、夏礼子、西本君代ほか

香天集12月1日 岡田耕治 選

玉記 玉
随筆(エッセー)か小説(ノベル)か足袋を洗うのは
試すには梟の顔ずれている
蛇は穴に象形文字に関節
マスクしてみるキリンの首の暗さ

森谷一成
世間(よのなか)を短く飛んで石たたき
大和三山そのまんなかの秋深む
蓑虫われに極刑を冀い
冷まじやどれも百円プラス税

夏 礼子
ふるさとを近づけている月明り
足音の親しくなりぬ十三夜
闇新た金木犀の雨あがり
ひとり居の水つかう音秋深む

西本君代
袴着の男子をあやす写真館
毬栗の毬要る人は五十円
黄落や珈琲たてる男の手
冬近し胎動を聞く掌

橋本惠美子
十月をねぎらっておりフルコース
ハーレーを降り立つ女菊日和
立ち話す影をうつして冬菫
アダージョとラルゴの狭間冬の水

中嶋紀代子
ギブアンドギブをつづけて冬銀河
短日や帰宅時刻のメール来る
ペポかぼちゃ夜中にタンゴ踊るらし
認知症の夫持つ友の富有柿

釜田きよ子
ホチキスの乾いた音や秋暑し
温暖化知るや知らずや秋の蝶
蟷螂の膝しなやかに使いけり
文化の日レシピ通りにせぬ料理

北川柊斗
冬陽ざしテラスに並ぶハーヴティー
冬日受く老犬ねむる小さき屋根
蛇口より切れぬ雫や冬の鵙
ふつふつと我慢限界たうがらし

坂原 梢
竜の玉子のポケットをこぼれ出づ
平凡が良いことになる夜長かな
柚子刻むほどに香りの増しゆけり
木枯の今も瓦礫は町の中

北村和美
夕刊の痩せてゆくなり日短か
ピンホールカメラ瞬く冬の星
初時雨パズルのかたちして落ちる
返り花ふみの余白の白薫る

正木かおる
田園は少しさみしく鳥肥ゆる
黄落や墨の作務衣の忙しく
二度となき今日一日の梨を剥く
冬ざれの港を離れプリンセス

安部礼子
カメラのレンズ小春日を持ち帰る
黒電話置き寒紅を見てしまう
腸の細胞として雪仏
炎の色は寒の夜を無限にす

吉丸房江
抱き上ぐる子が甘柿に届くまで
友招き山茶花の咲く今が好き
茶の花の心底黄色あたたかく
首かしげクリスマスローズ聴き上手
*伊丹市柿衞文庫にて。

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