香天集9月20日 岡田耕治 選
石井 冴
母と母板の硬きに午睡かな
あめ色になる玉葱の左の手
眼閉じ水母を空に放ちたり
うす味の野菜たっぷり小鳥来る
三好広一郎
炎昼の電柱すべて骨である
草紅葉ハンコを拭いた後始末
敬老の日よ聴き役の膝頭
合板は立てて断つなり秋高し
木村博昭
処暑の雨あがりゲームの始まりぬ
いなびかり愛のかたちを照らしたる
ゆっくりと八月尽の息を吐く
難解な言葉をかかえ鰯雲
夏 礼子
秋蝶に越され思案をふり出しに
星月夜メガネまるごと洗いたる
起き伏しの変わりなきこと風の色
遠き日を昨日のことのように月
神谷曜子
睡蓮を覗いて我の暗さ知る
同士として言葉を交わす酷暑かな
たそがれの直ぐに蚊の来るついて来る
終戦日亡き父坐る風の形
加地弘子
夕立のショック黄色の蝶が飛ぶ
合歓の花申し訳ないほど眠り
こぼれ萩家の内より笑い声
敗戦日二十四時間共に居て
宮下揺子
人と人たやすく繋ぐ立葵
予告なき花火に人の集まれり
岩塩が冷やしトマトにのっている
大西日人が創りし神・仏
堀川比呂志
はじめはぐうあとてんでんに蓼の花
とりあえず宙返りする凧の夏
ことごとく空を傷つけ星流る
ひるがえり合うシーソーの風の秋
正木かおる
おなもみのふたつみっつを連れてくる
群鳥が枝を占めいて青の柿
分散の隙間に充ちて金木犀
残日の冷やしうどんを食べ納む
永田 文
涼新た松の風音潮の香も
コスモスの波に入日のグラデーション
並べたる発電パネル秋暑し
足元へ霧じわじわと山の駅
*大阪府高槻市にて。
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