2020年9月20日日曜日

香天集9月20日 石井冴、三好広一郎、木村博昭ほか

香天集9月20日 岡田耕治 選


石井 冴

母と母板の硬きに午睡かな

あめ色になる玉葱の左の手

眼閉じ水母を空に放ちたり

うす味の野菜たっぷり小鳥来る


三好広一郎

炎昼の電柱すべて骨である

草紅葉ハンコを拭いた後始末

敬老の日よ聴き役の膝頭

合板は立てて断つなり秋高し


木村博昭

処暑の雨あがりゲームの始まりぬ

いなびかり愛のかたちを照らしたる

ゆっくりと八月尽の息を吐く

難解な言葉をかかえ鰯雲


夏 礼子

秋蝶に越され思案をふり出しに

星月夜メガネまるごと洗いたる

起き伏しの変わりなきこと風の色

遠き日を昨日のことのように月


神谷曜子

睡蓮を覗いて我の暗さ知る

同士として言葉を交わす酷暑かな

たそがれの直ぐに蚊の来るついて来る

終戦日亡き父坐る風の形


加地弘子

夕立のショック黄色の蝶が飛ぶ

合歓の花申し訳ないほど眠り

こぼれ萩家の内より笑い声

敗戦日二十四時間共に居て


宮下揺子

人と人たやすく繋ぐ立葵

予告なき花火に人の集まれり

岩塩が冷やしトマトにのっている

大西日人が創りし神・仏


堀川比呂志

はじめはぐうあとてんでんに蓼の花

とりあえず宙返りする凧の夏

ことごとく空を傷つけ星流る

ひるがえり合うシーソーの風の秋


正木かおる

おなもみのふたつみっつを連れてくる

群鳥が枝を占めいて青の柿

分散の隙間に充ちて金木犀

残日の冷やしうどんを食べ納む


永田 文

涼新た松の風音潮の香も

コスモスの波に入日のグラデーション

並べたる発電パネル秋暑し

足元へ霧じわじわと山の駅

*大阪府高槻市にて。


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