2020年9月6日日曜日

香天集9月6日 三好つや子、谷川すみれ、橋爪隆子、西本君代ほか

香天集9月6日 岡田耕治 選

三好つや子

サーモグラフィー噴水広場軋んでいる

はじまりの出口としたり線香花火

爪を切るたび遠のいてゆく夏野

風刺画になり損ねたるががんぼよ


谷川すみれ

墓詣母の大きなお尻押す

いつのまにくぐりぬけたり朝顔よ

真昼間のカンナを掲げ夢の中

銀杏黄葉風の形を受けついで


橋爪隆子

あんぱんを冷やしていたる暑さにて

直角に曲がるストロー夏盛ん

風鈴の千の音色をくぐりけり

刃に触れて自ら爆ぜる西瓜かな


西本君代

夏の果て凭れているとねむくなる

ラディッシュの間引菜の朝味噌汁に

先輩は夜間中学へと転ず

砂糖黍修学旅行生が刈る


櫻淵陽子(7月)

夏の蝶雨の匂いの向こうから

無口なるコロナウィルス熱帯夜

水風船割れて子の声夏きざす

平泳ぎ君を見つけて沈みゆく


大早泰子

合歓の木や空にも地にも花咲かせ

腹見せて金魚ポンプの泡のぼり

川風に色を落して翡翠翔ぶ

秋の空取り残されていたる月


櫻淵陽子(8月)

カステラは十二等分盆の月

もて余すマスク二枚と盆休み

二十個の鬼灯を剥く小さな手

秋暑しTo Do Listにレ点増え


小崎ひろ子

深くなる三階に聴く虫の声

転居先アベノマスクが置き去られ

引越しや活字の森を箱に詰め

箱解きてくたくたになる新刊書

  

櫻井元晴

爺ちゃんの影を追いかけケンケンパ

豌豆の花から蝶の透けて翔つ

自慢顔初めて取ったカブト虫

墓参り供花を忘れて来たりけり


*この写真は、「香天」60号の表紙に使いました。ふけとしこさんから次のようなすてきなお便りをいただきましたので、紹介します。〈今号のハツユキカズラの表紙、よかったですね。常緑で紅白の色も入って、60号にふさわしいと思いました。ますますのご発展をお祈り申し上げます。〉ふけさん、ありがとうございました。



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