2020年10月18日日曜日

香天集10月18日 石井冴、三好広一郎、神谷曜子、橋爪隆子ほか

香天集10月18日 岡田耕治 選

石井 冴
水平になろうと揺れる露の玉
野分立つ胎児つるんと出て来たり
柞より母に便りが届きけり
ふっくりと小父さんになる瓢かな

三好広一郎
天高ししゃがんで拾う記憶力
鍬の柄の痩せたままある神無月
折り鶴の痩身を解く良夜かな
隠したい父が出歩く秋時雨

神谷曜子
リュックから服の晩夏を取り出しぬ
人間がこわした海を秋刀魚来る
台風とコロナウイルス渦になる
一歩ずつ足場を探しななかまど

橋爪隆子
秋簾何処か歪んでおりにけり
大群のままに進まず赤蜻蛉
ネックレスの絡まりしまま台風来
桐一葉ずずと舗道をゆきにけり

浅海紀代子
ひとり寝のベッドの軋む夜の秋
野良捨ての猫の声して長き夜
新刊のページゆっくり秋澄めり
庭の声攫って行ける野分かな

河野宗子
秋灯暗く点りて武道館
初紅葉試歩の目標定まりぬ
木登りが上手になりて夏休
新型のグリルを焦がす秋刀魚かな

古澤かおる
満月の見えない角度腰を置く
高きに登るおにぎりとサンドイッチ
縁側に椎茸を干すしじまかな
道中の背中小さし草の花

永田 文
尾をたれて猫通りゆくそぞろ寒
稲穂波近江富士へと及びけり
野仏を少しはなれて彼岸花
皮ごとの葡萄甘くもせつなくも
*阪南句会の阪南市地域交流館にて。


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