2020年11月1日日曜日

香天集11月1日 森谷一成、三好つや子、中嶋飛鳥ほか

 香天集11月1日 岡田耕治 選

森谷一成
オーバーヘッドシュート空転夏終る
地下鉄の階で待伏せちちろ虫
葉鶏頭また炎上をさずかりぬ
飲み歩く十五夜のやや缺けるほど

三好つや子
一本の紐流れつく紅葉かな
窓開けて終わる映画よ秋薔薇
草紅葉いろとりどりの土の息
月光になるまで鎌を研ぐ漢

中嶋飛鳥
黒葡萄甘えることを忘れおり
十三夜好みて端を歩く癖
金魚一つ足し十月の訃報録
右へぶれ左へ流れ鴨の陣

夏 礼子
道ひとつ違えコスモス畑かな
黒ピーマン内緒のはなし聞きにけり
秋風や脳の海馬をゆるめたる
白杖を越さない歩み秋桜

釜田きよ子
露草の節荒々し痛々し
退屈のかたまりとしてねこじゃらし
隊列を組み始めたる曼珠沙華
毒茸つついてからの自己嫌悪

辻井こうめ
月代や静かに時を待つドラマ
紅茸やおとぎの国の送迎道(ひるめみち)
小流れに不揃いの芋七、八個
天高し野外講座の聞こえくる

前塚かいち 
幼くて蟷螂の鎌光りけり
アマビエを掛け秋光の内科院
秋暁や猫枕辺に鳴きに来る
秋しぐれ「野ざらし紀行」集い読む

中濱信子
探し物は置いたところに秋桜
秋風へ唄う口して埴輪かな
白木槿空き家となってしまいけり
地下足袋の音は立てずに松手入

吉丸房江
草の実の小さきを越す散歩かな
ブラウスに一つ付けたり山紅葉
空という名前のついた新酒にて
新米の良い子を産めと塩むすび

北村和美
体育祭ジャズのビート伝いくる
五線譜に音の景色や十三夜
花野行く髪をうすむらさきに染め
秋深し雨に消えゆくピアノにも

松田和子
薄紅葉仏の水掬いたる
勝負つくまではたはたとにらめっこ
かざす手の刺身包丁秋高し
飯盒の湯気立ちあがる今年米

櫻井元晴
鈴虫の鳴きつぐ夜の上がり口
秋の虹十七音の句を求め
幾度か交わした言葉月今宵
コオロギや挨拶もなく床の間に
*岬町小島にて。

0 件のコメント:

コメントを投稿