2020年12月20日日曜日

香天集12月20日 石井冴、三好広一郎、夏礼子、中嶋飛鳥ほか

香天集12月20日 岡田耕治 選

石井 冴

わが椅子を誰かが運ぶ冬野かな

六林男の日背骨を立てて家を出る

葉を落とし大根を楽にしてやりぬ

家中の神に大根のよく煮えて


三好広一郎

軟膏の蓋が転がる年の暮

蓑虫の巾着あります奥へ奥へ

布団干すあぁ死にそうな遊びかな

目の中に白菜の瘦せていく音


夏 礼子

聞き役に徹すつつじの帰り花

青空の濃くなってゆく木守柿

鍋の湯が沸きすぎている憂国忌

花枇杷や回覧板は不急なる


中嶋飛鳥

弔いの墨に一滴冬の水

コーヒーの湯気よ数字を弄び

水洟のひとすじ切羽詰まりたる

入院の見つめ始める庭の枯


辻井こうめ

開戦日背山の笹の花咲けり

六林男忌や浚ひきれない潦

山眠る未読のままに戻す本

嘴太のみかんが二つ空駈くる


木村博昭

くさぐさの家庭菜園冬日向

湯の町を湯の川流る雪催

討入の日なり囲みを逃げてゆく

ポインセチア包みのままにするギフト


嶋田 静

ビートルズのイマジン渡る冬の星

波郷忌を真白に椿咲きにけり

山茶花や幼き写真胸にして

手折られし野辺の白菊香り濃し

 

櫻井元晴

蟹鍋のみんな無口になっており

粕汁の匂いが残り長電話

冬の雷愛犬だけのかくれんぼ

おひとつと蜜入りリンゴ差し出さる

 

永田 文

日をとどめ冬の紅葉のきわまりぬ

走る子と歩く子とあり初時雨

はたはたと風が落葉を追いかける

木の実食む唄うごとくに喉ふくれ


*岬町小島にて。



0 件のコメント:

コメントを投稿