香天集1月31日 岡田耕治 選
石井 冴
少しだけ声のもれ来る初湯かな
火の鳥のはなしに及ぶ女正月
恐竜を忘れられないちゃんちゃんこ
ことばかず貧しき焚火囲みけり
夏 礼子
影持たぬ千の侘助日を紡ぐ
穏やかに老いたる柚子の香りかな
コロナ禍の心は自由どんど焼き
手袋の両手をつつむ握手かな
前塚かいち
水洟を指さしている朝かな
北塞ぎ猫の居場所を確かめる
日記果つ「あすのこよみ」を貼り続け
三年の連用日記新たにす
辻井こうめ
煮黒豆そっと蓋上げこんなとこ
一番大吉天神さんの初みくじ
新春の空気噛みゆく箱根かな
初針の晒をはしる小町糸
中濱信子
冬夕焼二人でいてもひとりなる
三寒四温カレーの味を濃ゆくする
神様を懐にして初詣
吹く息と湯気が一つになずな粥
北村和美(1月)
年賀状思い思いの好物と
赤い靴一直線に日脚のぶ
寒に入る乾かぬ髪に手を置かれ
ランダムに椅子に腰かけ春隣
安部礼子
とまらない変化の氷柱トンカラリン
凍土がアルカロイドを食らってる
竹馬を握れば指の親和力
ラムサール登録済の雪兎
北村和美(12月)
手袋と手袋で五指つなぎおり
一日は鍋焼うどんから始まる
すきま風バイクエンジン突き抜けて
冬休み足に足のせ眠りおり
正木かおる
おとついの顔しておりシクラメン
零時過ぎ私ひとりの雪景色
手鏡の向こうに雪の舞い出しぬ
音のない冬の朝の卵スープ
櫻淵陽子(10月)
月さやか息づかいさえ気になって
長き夜や王手をかける手の震え
リモートで繋がる長き夜に乾杯
菊澄める朝の駅舎の陽だまりに
北村和美(11月)
午後四時の光をたたえ金木犀
軍配を上げ千歳飴うまい棒
手探りのコロナ禍の先ぼたん鍋
冬の夜の赤き子の頬包みをり
櫻淵陽子(11月)
老夫婦それぞれ一個柿をもぎ
新酒酌むリモート会議終わらせて
行秋のかすれるペンを走らせて
コンビニのおでんたっぷりカップ酒
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