香天集2月14日 岡田耕治 選
安田中彦
丹頂の隠るる白き襖かな
冬の森ぬくき楽器となりにけり
鬼となる途上の吾をやらふなり
飢えの鯉口開けてゐる二月かな
柴田亨
霙降る静寂にわずか芽吹くもの
生き急ぐものたちといて冬霞
借りのある友ばかりなり木守柿
再びを約して冬の灯を消しぬ
三好つや子
黒帯の少女の声す恵方かな
まんさくの咲いて湯灌のはじまりぬ
風光るドレミを零す牛乳壜
生命線もみくちゃにして花菜漬
久堀博美
曲り角一つ違えて春の色
春星や被れば香るバスタオル
如月や会いたくなれば灯を点し
指で円作り苺の甘きこと
小崎ひろ子
新しき風知らぬ地の五色雲
定型の意見を述べて手袋す
ハッシュタグふくらすずめの居る垣根
ウイルスを忘れて居たり冬薔薇
宮下揺子
言うほどのパッション持たずシクラメン
裸木に弱音を見せて歩き出す
骨盤底筋体操春隣
花冷えの合羽のように防護服
河野宗子
初氷軍手の指が浮いている
北風を五センチ入れて七回忌
初雪やうなり出したる室外機
駅伝の顔から春の走り出す
櫻淵陽子
ブランデー紅茶に入れて春を待つ
非接触隣の町は春めいて
春の蝶微熱の中を飛びにけり
どうしても見付からなくて春の虹
岡田ヨシ子
年末のとうとう買わぬ宝くじ
入院の空白のあり古日記
雨となることの遅れて初地蔵
春帽子着けて鏡と話しけり
古澤かおる
特大のこんにゃくを買い春うらら
トーストに魚のフライお中日
一つずつ苺大福家族かな
ハハコグサ墓に最初に芽吹きけり
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