香天集2月21日 岡田耕治 選
石井 冴
実南天地に着くまでは男の子
中指のなぞりたくなる深雪窓
異次元とも大縄跳びに入るとき
歯ブラシを使い分けたり若牛蒡
三好広一郎
寒牡丹光の棒に傘を接ぐ
梅開く母の畳にヨガマット
初蝶のすぐ恋をする付け睫毛
朧夜や手を離しても箸の立つ
砂山恵子
座布団の数だけ出して蓬餅
この白を見つけてほしき薺かな
食べて寝て風呂入るでよし春隣
ハンガーのガウン押しのけ春コート
中嶋飛鳥
哲学のまん真ん中を冬の雷
経済と二枚重ねの黒マスク
体重をかけ北窓を押し開く
百歳の足取りに添う犬ふぐり
加地弘子
人の日のいつまでもある忘れ物
人日の眠くなるまでラジオ聞く
寒禽に糸の絡まる日のありて
どの椅子も離れて置かれ春隣
楽沙千子
非常時の目を交わし合うマスクかな
根菜の甘みを増して凍返る
春暖炉囲み山荘更けゆけり
外出を禁じ建国記念の日
松田和子
山焼の二十を祝う飛火かな
老梅に居ついていたり蜘蛛の客
クロッカス香りはじめる朝の日よ
公魚のいとなみい出す余呉湖かな
永田 文
日の射してほつほつ梅のひらきけり
楽しさと淋しさをまぜ毛糸編む
ふらここの高みに笑う声のする
少しずつ影ふくらんで土手の春
中辻武男
恵方巻そなう吾が身に招く福
寒肥や花のお礼を忘れじと
焼芋や吾子の手より受くことのあり
大学の決まりし孫へ梅の花
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