2021年2月7日日曜日

香天集2月7日 谷川すみれ、渡邉美保、浅海紀代子ほか

香天集2月7日 岡田耕治 選

谷川すみれ
春昼の赤子の温み抱きけり
右脳から鳴きはじめたり春の蝉
木蓮の開くものから朝になる
春の星父の遺した鎌のこと

渡邉美保
盤根錯節中より芽吹くもののあり
金目鯛煮て晴れやかな母のこゑ
突堤の先になくなり冬の虹
薄氷の一部始終を潦

浅海紀代子
階や冬の底へと下りて行く
あるがままの顔にして初鏡
カステラの隅っこ摘まむ女正月
猫の髭しきりに動き春隣

吉丸房江
晴れの顔半分かくすマスクかな
水仙の香りまっすぐ近づきぬ
マスクして生きていますと年賀状
初暦まだ見ぬ月日重なりて

松田和子
初鴉波といっしょに鳴きにけり
年賀状一人ひとりに話し掛け
塩盛や初練習がスタートす
冬晴のヒマラヤサクラ海の香と

釜田きよ子
蓑虫の上手なホームステイかな
蓮枯れてモダンアートに変身す
銀紙のビロビロ鳴りて寒波来る
啓蟄の不要不急を問われおり

楽沙千子(12月)
煤払仏像に身を反らしおり
考えの違いそのまま日記果つ
出勤の背を伸ばしたる冬の空
復興を願いて集う冬灯
 
楽沙千子(1月)
大鷹の舞う片男波風致地区
風冴ゆる紀州青石踏みゆけり
初凪や沖に眩しく陽の差して
阪神忌幼児は知らず火を点す
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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