香天集3月14日 岡田耕治 選
安田中彦
切株が土へと還る日永かな
遠景の海は春泥かもしれず
海馬から桜吹雪の生まれ出づ
血を吐いて鳴く鳥ありや弥生尽
柴田亨
朽ちてなお招き寄せたる蟻の列
蒼穹を震わせてあり春鴉
骨となり烟となりて春がすみ
夏帽子クリームパンもジャムパンも
三好つや子
きさらぎのスープにふっと覗かれる
眩暈とは白の耀う蝶の昼
故郷の母音のひらく花辛夷
秒針の跳ねる縺れる白魚よ
小島守
啓蟄の何度も話切り返す
苦しくも楽しくもあり茎立よ
春泥を避くことならず猫車
卒業の傾いてくるリボンかな
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