2016年4月26日火曜日

掌やぺしやんこの蚊の欠くるなく 加田由美

掌やぺしやんこの蚊の欠くるなく 加田由美
『桃太郎』ふらんす堂。両手で蚊を打って、手のひらを確かめますと、まるで押し花のように完全な形を象っています。命を奪ってしまったことの悔いは、欠けることなく残っているという象徴によって、そのいとおしさを感じることさえ止めています。晩年の山口誓子さんに仕えた作者の、書き方の神髄が伺える一句です。

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