2016年5月7日土曜日

癌といふかなしみを飼ふひとに春 衣川次郎

癌といふかなしみを飼ふひとに春 衣川次郎
「港」5月号。「かなしみ」を大辞林で見ますと、かなしむことの次にいとおしむことが続きます。「飼ふ」という動詞は、いとおしむことという意味も誘ってくるように感じられます。春という時間は、あなたにもわたしにも平等に訪れます。あなたは癌というかなしみを、わたしにはこうして生きて在ることのかなしみを、この春がつれてくるようです。ご自分をいとおしむことができる衣川さんだからこそ、このように人をいとおしむことができるのでしょう。

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