2016年6月26日日曜日

香天集6月26日 谷川すみれ、加地弘子、橋爪隆子ほか

香天集6月26日 岡田耕治 選

谷川すみれ
明け方の夢の体温曼珠沙華
ねこじゃらし影が生まれて影と会う
蒼空を寝っ転がって秋の海
馬の目のまっすぐに見る秋風裡

加地弘子
海色の絵の具を足して夏に入る
点点と家の数あり夏灯
蛍火の薄き明滅生まれけり
蛍籠コミカルに鳴る靴の底

橋爪隆子
夏服をつぎつぎ通す改札機
休ませてくれぬ1万株の薔薇
旧姓の名札をつけて風薫る
干し物に若葉の匂いたたみけり

藤川美佐子
目くらみて炎帝に非のなかりけり
途中から自由になりし時鳥
回転をゆるめていたり梅雨の蝶
梅雨の宿トレモロわれを淋しめる

中濱信子
美容室出て真っ先のつばくらめ
広島の夏折鶴の飛ぶ構え
立葵エーデルワイスの曲とどく
紫陽花や木綿の服で出て来たる

古澤かおる
藍浴衣仕事は男に任せたる
生地見本何度もめくり薄暑光
本を読み時にラムネを売りにけり
青芝へ赤子一人を転がしぬ

大杉 衛
上り来て花屋の奥の水芭蕉
夕焼は笛吹童子の真うしろ
ニュートンの左脳に開く水中花
空蝉は柱時計となりにけり

竹村 都
走り梅雨新築工事始まりぬ
梯子より声降りてくる袋掛け
柿若葉売家の札なくなりぬ
名を問えば答え駆け出す夏帽子

立花カズ子
つつじ咲く丘登り来る風のあり
遺言を成してあしたへ風薫る
風薫るガラス小鉢の昼の膳
枇杷熟るる列車の窓をすれすれに

西嶋豊子
打水の頭を下げて通りけり
波乗りの男は若きまま老いる
メガネかけメガネを探す夏座敷
妣の扇子いつもの場所に戻りけり

0 件のコメント:

コメントを投稿