香天集6月5日 岡田耕治 選
安田中彦
才あらば新樹のひかり描くべう
太腿てふ二本の川やシャワー浴ぶ
箱庭や川を隔てて家と人
天花粉雲のかたちの蒙古斑
浅野千代
坂の風烈しく子らに矢車に
夜行バス待つ涼しさを持て余し
冷蔵庫のぬか床目掛け泣いて帰る
手風琴虹立つまでを側にいて
森谷一成
葬りなき墓標チェルノブイリの忌
左手を忘れていたり五月憂し
精肉店に緋牡丹でんと坐りけり
梅雨に入るのっぺらぼうの家続き
両角とみ子
万緑やはっきりわかる場所に居る
水芭蕉山の言葉を交信す
足元に一息いれて谷若葉
真っ直ぐの声ぶつかって花あやめ
北川柊斗
アオザイとサリー売る店夏初め
群青の螺髪に小蠅とまりたり
入梅や目薬すこし溢れたる
あの星で会ひましたよね虹立ちぬ
大げさに薔薇のゲートをくぐりけり
越智小泉
卓袱台の丸きに置かれ柏餅
街薄暑信号のない地下歩む
更衣白一色が登校す
乱反射するもの溢れ夏に入る
羽畑貫治
髄膜腫首にメス入れ溝浚う
いつまでも麻酔の中や花衣
MRIが癌を見付けて春暑し
七転び八起きのありて青簾
村上青女
手作りの添水の音や梅雨近し
人参の花活けてあり雨の昼
屋上のスケボーの音風薫る
若布切る人等の声の響き合い
0 件のコメント:
コメントを投稿