宮下揺子
トンネルの薄暑を抜けてモノレール
内海の鴎引きつけ大西日
静止画に動画が混ざる夏至の夜
敗戦日砂場を洗う人の居て
北川柊斗
身の内に蛇飼いならし女たり
黒といふ軽さありけり川蜻蛉
日盛の手をかざし見る時刻表
蟻の烈古代エジプトよりの道
トンネルの薄暑を抜けてモノレール 宮下揺子
モノレールが静かにトンネルに入っていきます。開けていた視界が暗くなると同時に「薄暑」を感じたのです。それまで、様々なものに向けていた視線が遮られたことによって、ああもう夏だなという体感がやってきたと言ってもいいでしょう。しかし、モノレールは再び明るさを取り戻し、開かれた光景へと戻ってきました。
朝涼の電動ミシン点りけり 久堀博美
7月10日掲載分。朝の涼しい内に済ませてしまおうと、電動ミシンを取りだしました。スイッチを入れますと、手許が明るくなるようランプが点ります。この微かな明かりを朝涼の中に感じ、布を走らせていくひとときが、作者にとってとても大切な時間なのにちがいありません。ミシンによって生まれ変わる布の明日が感じられる一句です。
※写真は、泉佐野市内のホテル最上階からの大阪湾です。
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