茫申記葭切がまだ鳴いている 星野昌彦
『茫申記』春夏秋冬叢書。「茫」は、心がうつろでぼんやりしているさま。星野さんは申年生まれなので、「茫申」とは自身のことを皮肉るように表現されたもの。いつもながら箱入りのしっかりした句集ですが、箱には「見ざる、言わざる、聞かざる」の猿の3態が描かれています。ところが、句集を取りだしますと、しっかり見、しっかり聞いて、もの言おうとする猿が浮き立つように描かれています。ぼんやりすること、何もかもうつろになってきたように表面は見えますが、内面ではあらゆるものが鮮明に捉えられ、表現されようとしています。そう、葭切が大きな声を上げて鳴いているのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿