2016年8月11日木曜日

太陽を目指しておりぬ蟻の道 高野ムツオ

太陽を目指しておりぬ蟻の道 高野ムツオ
「小熊座」8月号。18句の冒頭に「帰還困難区域」という前書きがあり、「春の月除染袋の山の端に」という一句が配置されています。この句は18句目なのですが、最初の前書きがどの句にまでかかるのかとハラハラしながら読んでいくことになりました。最後のこの句にたどり着いた時、ここまでかかっているのだと確信しました。帰還困難区域には、人の影がありません。人の暮らしの中で甘いものを求めて散り散りに広がっていた蟻も、今は一方向に向かっています。18句の静寂の最後に、一筋の命が太陽へと続いているのです。
*鳥取県教育委員会の仕事で、鳥取に出向き、帰りに鳥取砂丘に立ち寄りました。

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