2016年9月20日火曜日

葉子好き葉子の好きな著莪が好き 米岡隆文

葉子好き葉子の好きな著莪が好き 米岡隆文
『虚(空)無』邑書林。句集の後記には、〈数えきれない程の様々な病気を抱えながら、愚痴もこぼさず、日々の辛さ、しんどさを自らの精神力、意志力で耐えながら克服し、何事にも直向きに努力し、潔く、凜々しく、けなげに生きた葉子さんの魂が好きでした。〉〈葉子さんの居る彼の世へ私の声が届きますように。〉とあります。「葉子好き」にはこのような思いが込められているのですね。私がこれまでに見た著莪の花で最も美しかったのは、岬町孝子の森に向かう川底の暗さの中に群生している繊細な花々の白でした。普通俳人はそんな目の前の著莪の花を詠うのですが、隆文さんは「葉子の好きな著莪が好き」と詠っています。私たちとは言葉への体重のかけ方が違うように感じられます。この一巻には、隆文さんをとおして、葉子さんという一人の生が著莪のように次々と新しい花を咲かせています。
*鳥取市のわらべ館にある人形の樹。

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