「香天」45号は、只今スピードを上げて仕上げの段階に入っています。ご購読の皆さまには、10月中旬にお届けできると思います。編集中に、「香天集」の追加がありました。また、「選後随想」を書き加えましたので、先に掲載します。岡田耕治
■香天集8月追加
澤本祐子
示談書の甲乙となり梅雨明ける
明易や寝るための糸逃しいて
満ち足りしひと日の汗を流しけり
灯を入れて淋しくなりぬ盆提灯
■香天集 選後随想 岡田耕治
これからは風のままなり破芭蕉 谷川すみれ
夏の間青青としていた芭蕉の大きな葉が、次第に破れ始めました。風を受け、風を押し返してきたそれは、破れるほどに風のままになってゆく、そんな自在さがイメージできます。私たちの人生も、破れるほどに自在になるのかも知れません。
妻母姥粗方すませ目高飼う 加地弘子
妻となり、子を産んで母となり、孫たちの面倒を見て姥となり、女としてなすべきことは「粗方」すんだなあという実感には、読む者の身を軽くしてくれます。そんな弘子さんが目高を飼い始めました。なんと手間のかからない、なんと清々しい。
炎昼のここに居りけり靴磨き 木村 朴
人通りの多い地面に近い位置で、懸命に靴を磨く仕事は体力が勝負。炎昼であれば、駅前の日陰に陣取って靴が現れるまでじっとしている必要があります。ああ今日はこんなところに居たのかと、その靴職人を認める朴さんのこの視線が秀逸です。
手術後の一日にして髪洗う 羽畑貫治
大きな手術をされた貫治さん。その後は、丁寧に経過を見ていく必要があります。しんどいなと思う日がつづくでしょうが、ましだなと思える日に、入浴だけでなく髪も洗うことにしました。時間と共に恢復に向かう作者の表現を心強く感じます。
冷奴薬味を溢れさせている 中辻武男
よくある光景と言ってしまえばそれまでですが、武男さんのこの書き方に惹かれます。冷奴と言えば、われら庶民の食べ物。せめて、薬味を溢れさせて、「豪華な一品」に仕立てて、食べること、飲むことを愉しもうとする心意気が感じられます。
炎天を帰るカメラを熱くして 西嶋豊子
炎天下に出かけて、やっと家にたどり着きました。荷物を降ろしますと、中でも黒いカメラが一際熱を持っていました。旅行でしょうか。カメラを持って出かけたハレのひとときが、収められた映像よりも先に、その熱さによって蘇ったのです。
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