中村静子
頭から飛び出して来る恋の猫
足跡のじぐざぐ光る春の雪
春一番たちまち川の濁りけり
点る灯の中に振り込む木の芽雨
三好つや子
卵の殻屋台に増やし涅槃西風
きさらぎの木の芽ドレミの匂いする
淹れたての炭焼コーヒー笹鳴けり
遠く来て駅の出窓の立雛
岡田ヨシ子
白梅の香り新たに鳥の声
雲ちぎれ鴉飛び交う春の海
若布刈る一人の潜り見ていたる
何をしても疲れの取れず春の月
【選後随想】
頭から飛び出して来る恋の猫 中村静子
恋猫が声を出しながら飛び出してきました。もちろん、頭から飛び出したのですが、あえてこう書かれたところが面白いと思います。「頭から」には、初めからといった意味もあり、恋猫の出現を切っ掛けに何かが始まる予感をはらんでいます。
遠く来て駅の出窓の立雛 三好つや子
雛は家に飾るものですから、在所の空気や人間関係の中に現れます。ところが、旅をして降り立った駅の出窓にその雛は飾られていました。しかも、立ち姿の雛ですから、新鮮な空気が辺りに漂っています。こんな旅をしてみたい、そう思わせてくれる一句です。
白梅に近づきますと、まずその香りに包まれます。しだいにその場に慣れていきますが、チッチッチッという鳥の声が、その香りをまた新たにしてくれました。
*大阪府阪南市にて。
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