香天集4月2日 岡田耕治 選
玉記 玉
春思とはパッとハートのフラミンゴ
囀へゴムの手袋吊るしけり
無いはずの風に磨かれしゃぼんだま
水に置く雛は私を見ておりぬ
中嶋飛鳥
亀鳴きて家の傾き始めたり
学校の時計の止まる春休み
鳥雲に何の社か知らぬまま
檻に寝るライオンの昼花の昼
三好つや子
こんこんとモネになりゆく春の水
男は撮り女はきざむ蕗の薹
人と火が激しく二月堂の闇
啓蟄の土の伝言点字めく
澤本祐子
待つことの只中にして春の宵
啓蟄やつきぬ話のかみ合わず
春光のカフェに藤村詩集あり
リューマチを宥めていたるつくしんぼ
釜田きよ子
野焼きして阿蘇の大地を顕にす
真っ先にとんがり山の笑いけり
青虫の青い弾力手の平に
切れかけの電池のままに春の昼
藤川美佐子
彼の山へつづく細道鳥雲に
ブランコや加速の足を曲げ伸ばし
持ち重るものの増え行く万愚節
どうみても私は私四月馬鹿
森谷一成
三・一一源氏全帖読み了えず
湯上りの赤子の腹も霞かな
子が母に化けてゆくなり四月馬鹿
呟きは三鬼に倣う万愚節
坂原 梢
桃ひらく留守番電話からの声
卒業すすべての椅子を残しいて
二時間に一つの列車卒業す
春の土定年なしと言い放ち
越智小泉
水音と人語を残し鳥帰る
春光を乗せ釣舟が沖めざす
校庭に深々と礼卒業子
桃の花母似の顔が笑いけり
浅海紀代子
音たてて畳む新聞二月尽
はらからと老いて見上ぐる桜かな
子の家の近くて遠し葱の花
花冷の階を上りて一日終う
竹村 都
梅まつり和服姿の師に出合い
母の忌や形見の雛に迎えられ
棟上げの紅白の餅春の空
風光る垣に空瓶並び立ち
*香天の総会で吟行したみさき公園のライオン。
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