中村静子
風船やもう限界の近づきて
走り茶に豚饅頭の匂いけり
音もなく地を蹴って跳び蟇
潮風の殊に艶増す蛇の衣
中嶋飛鳥(四月)
泣きて起つ幼の膝の春の土
花疲れ指の根元のめくれたる
紙風船昭和を丸で囲みたり
春愁を両手で丸め放置する
消灯の放送流れ猫の恋
柔らかき棘を持ちたる若葉かな
来年は四人家族の鯉幟
飛び掛かる気配を遺す蝮かな
中嶋飛鳥(五月)
小さき掌の小さきコインの汗ばめる
先生の足元にあり踊子草
益荒男の眉を剃り上げ夏兆す
どくだみの十字広がり荒れ進む
待つことに慣れてくるなり花ミモザ
洋館の窓に嵌められライラック
杖上げてハンカチの木を教わりし
メメントモリ草萌えの中に居る
橋本惠美子(五月)
春風や袋小路に寄り道す
花の昼ちょこ一杯の眠りかな
子の頭通る高さを剪定す
飛び出してバケツに入る蛙かな
立花カズ子
白髪に残る童顔花の下
写し絵の子猫の瞳動き出す
戸締りの音立ててより月涼し
夕風や早苗田の波果てしなく
岡田ヨシ子
予報から外れてきたり夏の雲
野苺が競いはじめる空き地かな
ネイビーと白地上手に着こなしぬ
サングラスアクセサリーに旅鞄
*泉佐野市内にて。
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