香天集6月25日 岡田耕治 選
谷川すみれ
熱高く楓もみじの黄を渡る
つかまえるおしもどされる鶏頭花
蚯蚓鳴く裏口つねに開けておく
瓢箪の眠りはしんとむせにけり
北川柊斗
さびしらに蛍追ひたる指の先
直感より直観まさる蛍の夜
手のひらの生命線を蛍往く
蛍籠かかげて行かむ黄泉の路
木村博昭
相部屋の息を潜める夏の曉(あけ)
分身の点滴台と梅雨つづく
生きていて良かったと言い苺ミルク
予後の眼に薔薇の真紅を映しけり
古澤かおる
一瞬で開くテントや夏の雲
国道の一方通行あいの風
それぞれの部屋見えている更衣
写真の日卑弥呼の顔にほくろあり
戸田さとえ
夢の中詩を紡ぎゆく熱帯夜
日の盛宅配便の届きたる
糶に出す牛をつないで夏木立
朝採りのトマトを朝に切って出す
村上青女
音刻む鉄路の窓や梅雨きざす
山肌の緑に雲の影の藍
はつ夏の森に肺腑の清められ
八回も蜜吸っている黒揚羽
永田 文
麦を刈る光の波をちらしつつ
田の水の泡のひかりに源五郎
夜店の灯孤独の闇のせまりたる
誕生日ワイングラスにさくらん坊
*昨日、上六句会のホテルアウィーナ大阪にて。
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