三好つや子
骨太の自転車が来て昭和の日
あめんぼう水を調律して行けり
花は葉にウルトラマンの首の皺
眼鏡拭く遠い日の夏探すかに
久堀博美
補聴器のときどき唸る夕焼空
新緑の大病院の戦ぎけり
なめくじら骨密度など気にしない
しばらくはほたるぶくろの中にいる
森谷一成
新樹蔭霊車の黒を包まんと
ひこばえの悲しみ赤き国を生き
どれも同じ火屋の並列兵たりき
乱読の已んで再び鵜に戻る
浅海紀代子
新緑の森へ森へと家出する
新茶汲む静かな背中ありにけり
閉店の紙がちぎれて麦の秋
夕焼の川面に今日の流れゆく
釜田きよ子
葱坊主いずれ甲乙つけ難し
健やかな空腹感や麦の秋
ミサイルの誤差七メートル尺取虫
麦の秋この明るさに乾杯す
中濱信子
見る限り停滞の道山笑う
この夜をささやいている浅蜊かな
鉄線花紫濃ゆく昏れなずむ
でで虫が万歳をして雨上り
藤川美佐子
乗り合わす人たちと居て夕桜
雪柳枝にこだわり通り雨
餅草の魂を消すふかみどり
春光を行ったり来たりして待ちぬ
羽畑貫治
蛇の衣長く垂らせる呼吸かな
青田風地平の外へ連れて行く
点となり急降下する燕の子
口笛を吹いて実梅を落としけり
村上青女
只一つ平和願って座る夏
バスタブに今年は二輪姫睡蓮
夏霧や溶け合う海と島と空
ほととぎすはじめての朝月替る
*堺市教育センターのプラネタリウム。
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