玉記玉
逝く夏のみしみし噛んでものの種
透明な夏の雨です放送部
青蜥蜴おや年輪が濡れいている
生卵に番号いきなり夏野
三好つや子
青蜥蜴少年という不整脈
空に浮くランタン夜の金魚かな
胸の辺の羽化するかたち烏蝶
そうめんを啜り事案に風入れる
砂山恵子
神木に三千年の地籟夏
捩花や円周率を反芻し
理由なく集まる家族緑の夜
青時雨生き抜くことの嬉しさよ
中嶋飛鳥
境界を点してありぬプチトマト
半夏雨体温計の小さく鳴る
ざわざわと魂の透く蛇の衣
流されて透き形代ののつぺらぼう
澤本祐子
寂しさに晒されている白い薔薇
少年の喉透きとおるソーダ水
梅漬けて月日の流れとどまらず
マカロニの貝の形や夏至夕べ
森谷一成
青嵐の征服したる堤かな
囲いおく水も領土も時鳥
蜿蜒とフェンスに副えば時鳥
冷房に汚れ吊橋こわくなる
前塚嘉一
父の日や兵なる父の写真にも
八月の父の忌日の寡黙なる
八月と戦後生まれの平和論
五月闇原発いじめ許すまじ
中濱信子
かたつむり余生の方に進みけり
風に好き嫌いのありてシャボン玉
愚痴一つ五月の風が連れてゆく
更衣行きたき所一つあり
橋爪隆子
眼底に出血のある五月闇
追加する十円切手額の花
夕焼を背負って帰る柔道部
押し寄せる音に牡丹の崩れけり
大杉 衛
青胡桃ときどき雲を飾りけり
夕焼は次の頁にまで及び
額の花ひそかに青の移りたる
わが肋夕焼けているのみならず
竹村 都
新茶粥今も変わらぬ父のいて
君子蘭駄菓子屋の土間明るくし
遠足の背に磯の香を連れ帰る
バス揺れるたんびに汗の臭いけり
藤川美佐子
夏めくや青信号の瞬ける
何はさておき一日の筍飯
土塊をひっくり返し夏近し
夜深く鳴く時鳥ひとり汲む
安部礼子
フィニッシュテープ切られたあとの旱
労働の熱鎮めたる冷奴
再会に似る神籬の夏木雨
胸に風感じはじめる薄衣
越智小泉
老鶯の一徹なるに足を止め
まず供え戴きますとさくらんぼ
葉にすがり葉になりすます青蛙
太陽を頭上に置いて草いきれ
*岬町小島にて。
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