香天集7月23日 岡田耕治 選
谷川すみれ
鰯雲たどってゆけば行き止まり
実紫転がってゆく睡魔来る
本当に燃え尽きてみよ曼珠沙華
小鳥来る喪失の鍵の時間から
加地弘子
子かまきり風の光が濃くしたる
掛軸のあり鮎だけが生き生きと
蜥蜴みて活発になる新人類
老いてよくひっくりかえる天道虫
澤本祐子
夏蝶やサプリメントに操られ
枇杷の種吾の口より生まれけり
マカロニの貝の形や夏至夕べ
鶴を折るリハビリテーションの朱夏
橋爪隆子
一日の火種を消してゆくビール
かき氷崩れる頃に本音出す
瓜刻む音軽き日と重たき日
まっすぐな風まっすぐに立葵
砂山恵子
夏空や天動説を信づる日
うどん屋の木枠の窓よ百日紅
悔ひひとつ残さぬごとく蝉の殻
夏畑笑ふこと無き子の笑顔
木村博昭
父の日の息子も父でありにけり
遥かなる水平線や沖縄忌
万緑に溶け込んでいる旅鞄
働いて修羅も生き来て大昼寝
村上青女
長く居て小さき島の緑蔭に
双胴のしおさいという船の夏
囀りと船の音だけ島の夏
風の音山から里へ島の秋
岡田ヨシ子
予定なしアイスコーヒーから始める
施設から届く葉書のトマトかな
隣りから呼ぶ声のする昼寝覚
夏場所の力士にマイク向けてあり
永田 文
岩奔る水の勢い梅雨明ける
竜神のおわす淵とや木下闇
断層の上に夏くる夜のほてり
音さやか備長炭の風鈴と
*昨日、ふけとしこさん、久保純夫さん、香天の皆さんと出掛けた孝子の森。
0 件のコメント:
コメントを投稿