香天集9月24日 岡田耕治 選
谷川すみれ
いびつなるメタセコイアの去年今年
雪催鴉が先に着地する
衰えて引き寄せており石蕗の花
枯桜川はゆっくり呼吸して
加地弘子
空蝉を踏んでしまって泣き出しぬ
揚花火残りの刻を頻りなる
間をおいて終わりを告げる揚花火
星月夜話の通う距離にいて
大杉 衛
ひぐらしや遠いところに杭一本
掌の箱根細工や秋風や
秋風と書くには少し強すぎる
静物の翳を育てる十三夜
橋爪隆子
目高の目じっと見ている眼かな
輪の中に手踊りをして車椅子
鯉はねてつかの間の輪よ秋の水
秋暑しこげた匂いの世界地図
北川柊斗
明滅の迷信たどり秋の蝶
仮の世の全きものに芋の露
液晶の狭き画面を秋出水
天高しギターの音が突き抜けて
木村博昭
竜胆や湖も伊吹も晴れわたり
小さきにレンズを向けて草の花
村いちばん働き者の案山子かな
父と子の紙飛行機の天高し
永田 文
秋の空しろじろと畑ささくれて
曼珠沙華遊女の墓とつづきおり
月高し働く影のあまたあり
秋祭腕つりあげて法被の子
中辻武男
初鴨や今朝の池にぞ番いける
この道の途中にかかり秋夕焼
秋の夜の風が届ける遠太鼓
秋燕山里の路地弓なりに
越智小泉
街中に残る田んぼよ曼珠沙華
こんなにもが青年いる秋祭
月光や音も灯も消す仏の間
ひとり居の自由と孤独秋の空
岡田ヨシ子
縞蛇や小鳥を口に挟みたる
鳥渡る道路に獲物残しおき
高齢の学ぶ鉛筆文化の日
秋の風限りある身を一吹きす
*千曲市文化会館にて。
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