香天集1月7日 岡田耕治 選
藤川美佐子
ついと来て鬼になりたるとんぼかな
手花火の落ちて火花を放ちけり
空蝉の力を残ししがみつく
式服をととのえておく晩夏かな
宮下揺子
偏屈のなお偏屈や花八つ手
枯蓮右脳疲れるまで歩く
天井の龍と息する六林男の忌
山の駅降りて広がる大芦野
北川柊斗
十二月八日の空の鳩の群れ
まつりごと混沌たりや返り花
数へ日の雲の流れや鉋引く
幻燈をかかげわけゆく枯野かな
藤川美佐子
蜘蛛の巣を残し姿を消しにけり
手の平を合せていたり夏の月
闇深くひそむものあり施餓鬼寺
少年の次なる一手赤とんぼ
羽畑貫治
入院を決めて食する鰤大根
冬の蝶疾風の渓越えんとす
真夜中を覗き覗かれ雪女
ピン球と八十路を生きて春隣
戸田さとえ
幾山河寡黙な夫と花の宿
せりに出す牛を洗える夏木立
山畑に現れており立葵
時々は外に出たしと蝸牛
*高知城にて。
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