香天集3月11日 岡田耕治 選
三好つや子
とりけもの口をぽかんと春の昼
看護師の手のそこここに走り書き
春愁のチーズカッター波模様
天地の手品の中を蝶生る
砂山恵子
三月十一日
何事も何もかも無き春の波
蝶になること諦めたるはいつだらう
石鎚山はしろがねの山蝶生まる
太陽と我とを睨み奴凧
中村静子
煮崩れしおでん日向の香りして
走り根をあたためている落葉かな
冴え返る手紙の束を読み返し
半べその子にも風船からみつく
藤川美佐子
いくつもの瞳を持ちて石蕗の花
立春の日溜りにいて何もせず
紙を切ることの楽しさ春の宵
挨拶は短く過ぎて猫柳
*和歌山県古座にて。
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