石井 冴
騒がしく手の冷たさを握り合う
赤子から泡立ってくる春の家
コスチュームプレー糸遊を曳いていく
透明を苦しいという風信子
森谷一成
ひとむきに氷雪を嚼み舞上がれ
穴を出る玄武青龍朱雀白虎
中空(なかぞら)にわれ在り三月十一日
永き日のJOBとWORKを交ぜており
渡邉美保
花冷えや熟成といふ樽の底
手品師に気づかれぬやう春蚊出づ
耳裏の痒しタンポポ咲き始め
花びらのなかの椿象冴え返る
西本君代
雛あられうつわ折る子にもたらされ
花芽よりとんがってくる葉の芽かな
花開くわずか手前を切るボール
チューリップゆっくり言葉選ぶこと
澤本祐子
春二番とんちんかんの声を出し
春の宵金の湯へ行く下駄の音
ふらここの腕が翼となってゆく
陽のひかりつくしんぼうをつたいくる
安部礼子
魔性への境が見えて朧月
春の昼人の残滓を顕にす
三寒や人肌じかに誑かす
屋内の残響を抜け卒業す
坂原 梢
春光の音をたのしむゲートボール
啓蟄やスマートフォンをデビューして
耕して喜寿を迎えるトラクター
指先のたしかに弾み種を蒔く
越智小泉
鳥帰る生国聞かずじまいなり
ふと出ずる訛のありて蓬餅
彼岸寺一打一打を響かせて
対岸のさくらの一枝仏壇に
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