2018年5月27日日曜日

香天集5月27日 玉記玉、渡邉美保、辻井こうめほか

香天集5月27日 岡田耕治 選

玉記玉
仔猫六匹どこどこどこへどこどこへ
風から戻って噴水の退屈 
暗がりに鈴を育てて昼寝覚
眩しさは昏さ蝙蝠の逆さ

渡邉美保
紙魚走る南総里見八犬伝
天井の水陽炎や蛇の揺れ
見上げおり樋をま白き蛇の腹
蛇衣を脱ぐ音草を辷る音

辻井こうめ
麦秋やポンパドールのポプリ壷
セーブルの磁器展拝し薔薇排し
歌にする書けぬ漢字や浮いて来い
鎌首の中は覗かず蝮草

谷川すみれ

日本という眼鏡憲法記念日
杖をつく父の周辺麦の秋
蟬時雨辞書を重ねて朝終る
七夕や本がほしいと小さな字

橋爪隆子
鯉のぼり影に勢いありにけり
三頭の海豚のジャンプ夏来る
新茶汲むひとゆらしする急須にて
新緑を映し湯船の一人かな

西本君代
松代に大本営や首夏晴れて
どこまでも新緑私ひとしずく
青き踏む麺棒太き信濃かな
幸せを備蓄しておく鯖の缶

橋本惠美子
啓蟄のかざせば扉開きたる
抽斗の把手が錆びて雛の家
空欄を埋めるパズル春の暮
永き日の駅弁を提げ当直医

中濱信子
紙風船昔はあった薬置き
休耕田となるも菜の花盛りかな
友を訪うこれはこれはと藤の花
病院を出て一面の水田かな

木村博昭
書棚の書古び憲法記念の日
母の日やそこからぼくが見えますか
人気なき薔薇園を這う水ホース
摘みたての苺これもと手渡され

古澤かおる
薫風のパリから帰るワンピース
パセリ食む浜の言葉をしゃべりつつ
非常階の錆びを深めて緑さす
守宮鳴く画面に先祖現れて

安部礼子
むかしむかし父の背中が夕焼ける
静寂の時間の海にいる海月
原色の花が真夏の愛になる
梅雨寒し死の順番を問われたる

永田 文
背中の子のすとんと眠る花の昼
母を呼ぶ声の混じりて百千鳥
草叢の獸の匂い夏兆す
青空におぼれていたり揚雲雀


*上六句会のホテルアウィーナ大阪にて。

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